ベトナムのコールドチェーン物流~日系企業の投資と成長余地~

ベトナムのコールドチェーン物流市場が静かに存在感を増している。背景にあるのは、食品輸出の拡大、国内消費の高度化、そして医薬品流通に求められる品質管理水準の上昇である。本稿では、食品・医薬品分野を中心に、ベトナムにおけるコールドチェーン物流の需給構造を整理する。

2026年6月11日

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ベトナムのコールドチェーン物流市場が静かに存在感を増している。背景にあるのは、食品輸出の拡大、国内消費の高度化、そして医薬品流通に求められる品質管理水準の上昇である。本稿では、食品・医薬品分野を中心に、ベトナムにおけるコールドチェーン物流の需給構造を整理する。

市場は南部に大きく偏在している一方、南北をつなぐ長距離輸送にはなお課題が多い。こうした構造的な隙間に対し、日系企業はM&A、新規施設建設、自動化投資などを通じて、着実に布石を打っている。高付加価値分野を取り込み、物流ルートを最適化しようとする外国投資家にとって、ベトナムのコールドチェーン市場は拡大余地の大きい領域といえる。

ベトナムのコールドチェーン概要

ベトナムのコールドチェーン物流市場は、輸出主導型経済の成長と国内消費の変化を背景に、堅調な拡大を続けている。2023年時点の市場規模は約50億USDとされ、このうち南部が約60%のシェアを占める。[1]

南部への集中は、同地域が農水産物の一大生産地であることに加え、主要輸出港に近いという地理的条件に支えられている。ただし、市場を一括りに捉えるだけでは実態を見誤る。食品と医薬品では、需要の性質も、供給側の課題も大きく異なるからである。

物流セクターの売上高(十億USD)


物流セクターの売上高(十億USD)

出所:B&Company(VSIC49~52の企業データベース・物流セクターの市場シェアに関する専門家インタビューに基づく)

食品産業における需要・供給状況

食品分野では、低温輸送と冷蔵冷凍倉庫の双方で、需要に対して供給が追いついていない。消費者の嗜好が加工食品や冷凍食品へと広がるなか、この不足感は今後さらに強まる可能性がある。

需要が最も厚いのは南部である。中部、東南部、メコンデルタを含む広い地域に食品加工企業や水産企業が集積しているうえ、年間を通じて温暖な気候が続くため、厳格な温度管理が欠かせない。

国内消費の変化に加え、農産物・水産物の輸出拡大も、コールドチェーン需要を押し上げる重要な要因となっている。

主要な野菜・果物・水産物の生産量

(百万トン)
主要な野菜・果物・水産物の生産量

出所:ベトナム国家統計局(National Statistics Office)

ベトナムでは、果物、野菜、水産物が年間数千万トン規模で生産されている。しかし、これだけの生産量に対し、保管・輸送インフラはなお十分とはいえない。その結果、収穫後の食品ロスが深刻な課題となっている。現在、農産物の最大25%が加工工場や配送センターに届く前に失われており、年間約39億USDの経済損失につながっている。[2]

供給側を見ると、コールドチェーン物流事業者の多くは南部に集中している。主な集積地は、ホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省周辺である。この地域集中は競争の激化を招いており、各社は冷蔵冷凍トラックや高度な温度管理システムなど、近代的な設備投資によって差別化を図っている。一方、北部市場はまだ分散的で、冷蔵倉庫インフラの整備も発展途上にある。

供給側を見ると、コールドチェーン物流事業者の多くは南部に集中している。主な集積地は、ホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省周辺である。この地域集中は競争の激化を招いており、各社は冷蔵冷凍トラックや高度な温度管理システムなど、近代的な設備投資によって差別化を図っている。一方、北部市場はまだ分散的で、冷蔵倉庫インフラの整備も発展途上にある。

医薬品産業における需要・供給状況

医薬品分野は、食品分野とは異なる市場構造を持つ。特徴は、より厳格な運営基準と品質管理の要求である。

冷蔵保管や低温輸送の需要は、主にワクチンなど温度変化に敏感な製品で高まっている。一方、医療用生物製剤やインスリンなどは、通常温度で保管できる場合も多い。需要が特に大きいのは、医薬品メーカーが集積する北部と南部である。

医薬品企業は一般に、自社で物流網を保有している。外部の輸送業者を使うのは、追加的な輸送能力が必要な場合に限られることが多い。

供給側の参入障壁は高い。厳格な温度管理、保管技術、GSP基準への対応が求められるため、中小企業が参入する余地は限られている。一定のサービス品質を担保するには、多額の設備投資が避けられない。 このため、大手医薬品企業は、既存のコールドチェーンインフラを有する大手物流事業者と組み、包括的な3PLサービスを活用する傾向がある。同時に、流通下流の有力企業も自前の施設整備を進めている。FPT Long ChauやVNVCなどは、GDP/GSP準拠の倉庫、冷蔵保管施設、冷蔵輸送、温度監視システムに投資し、製品安全性の確保を図っている。

日系企業による投資

日系企業は、こうした構造的課題を単なる制約ではなく、戦略的な参入機会として捉えている。低採算で競争の激しい分野に正面から入るのではなく、先進技術、高いコンプライアンス水準、資本力を武器に、ベトナム特有のサプライチェーン上のボトルネックを解消しようとしている。

主要な日系コールドチェーン物流企業[3][4][5][6][7]

企業名 企業名 提供サービス 主な特徴
Konoike Vinatrans 1996 冷凍・冷蔵倉庫、海上貨物、温度管理トラック輸送 ・ベトナム初の日系物流会社

・施設はHACCP、SSOP、GMP認証を取得

SG Sagawa Vietnam 1997 一般倉庫、保税倉庫、冷蔵倉庫、国際航空・海上貨物、国内宅配 ・ベトナム全土で統合型3PLネットワークを提供
Meito Vietnam 2014 多温度帯の商業用冷蔵倉庫、荷役、配送センター運営 ・南部の複数倉庫で合計30,000パレットの大規模容量を運営し、物流ネットワークを高度に最適化
CLK冷蔵倉庫 2015 冷蔵・冷凍倉庫事業
保税倉庫
貨物輸送取扱
配送コンサルティング
・4温度帯倉庫を提供

・太陽光発電システム、防湿対策など、省エネ技術・先端技術を活用

Nichirei TBA Logistics 2023 太陽光発電システム、防湿対策など、省エネ技術・先端技術を活用 ・約20,000パレットの容量を持つ10室構成の冷蔵倉庫システムと3,000㎡のバッファールームを備える

出典:B&Company

コールドチェーン分野における近年の投資動向

近年、ベトナムの物流分野における日系企業の投資は、より深い事業統合、自動化、そして対象市場を絞った拡大へと向かっている。

<M&A、買収、戦略的提携>

一つの明確な流れは、M&Aを活用した現地ネットワークの獲得である。ゼロから物流網を築くには時間がかかる。そこで、既存の現地企業と組み、インフラと顧客基盤を一気に取り込む動きが出ている。1

代表例が、Mitsubishi LogisticsによるIndo Trans Logistics(ITL)への出資である。同社はITLの株式20.5%を取得し、2023年に持分法適用関連会社とした。Mitsubishiの資本力と、10万か所超のコールドチェーン・パレットロケーションを有するITLの国内インフラを組み合わせることで、全国ネットワークを自前で整備する時間とコストを大きく圧縮している。[8][9]

<グリーンフィールド型大型施設と自動化>

もう一つの潮流は、大型施設と自動化への投資である。運営コストの上昇や労働力不足が進むなか、日系企業は先進設備を備えたグリーンフィールド型施設に軸足を置きつつある。

Yokohama Reitoは、ロンアン省で5,200万USD規模、4.5haの自動冷蔵倉庫を建設しており、2025年3月までに商業運転を開始した。

Igarashi Reizoも、タイニン省で2,400万USD規模の冷蔵倉庫プロジェクトに着工した。同施設は2027年初頭の完成を見込む。日本の最先端ロボット技術や自動保管技術を導入することで、長期的なエネルギーコストと人件費を抑えつつ、ベトナムのサプライチェーン高度化に寄与する狙いがある。[10][11]

拡大機会

ベトナムのコールドチェーン市場には、需給ギャップが残る。日系企業が示す投資モデルを踏まえると、投資家にとっての拡大機会は大きく三つに整理できる。

第一に、中部地域における中間配送ハブの整備である。南北を結ぶ長距離輸送は、売上原価が高く、復路の空車走行も発生しやすい。中部各省に近代的なクロスドッキング施設や冷蔵倉庫を設ければ、トラックの回転率を高め、空車走行を減らし、利益率を改善できる可能性がある。

第二に、分散化した北部市場は、食品物流拡大の有望なターゲットとなる。南部では既存事業者間の競争が激しい一方、北部は依然として発展途上にある。ハノイまたはバクニン近郊に高品質な冷蔵・冷凍保管施設を整備する投資家は、直接的な競争がはるかに少ない環境で、加工食品やEC配送に対する拡大する需要を取り込むことができる。.

第一に、中部地域における中間配送ハブの整備である。南北を結ぶ長距離輸送は、売上原価が高く、復路の空車走行も発生しやすい。中部各省に近代的なクロスドッキング施設や冷蔵倉庫を設ければ、トラックの回転率を高め、空車走行を減らし、利益率を改善できる可能性がある。

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ベトナムの冷蔵倉庫市場:戦略的投資機会

ベトナムの物流は外国投資を誘致している

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2008年からベトナムで市場調査を専門とする最初の日本企業です。業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど、幅広いサービスを提供しています。さらに、最近ではベトナムの100万社以上の企業のデータベースを開発し、パートナーの検索や市場分析に利用できます。.

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[1] 49~52のVSICコード(旅客輸送のVSICコードを除く)に基づくEnterprise Databaseおよび物流セクターの市場シェアに関する専門家への詳細インタビューに基づくB&Companyの算定

[2] The Investor(2023年)。セクターが急成長する中、Yokoreiが$52百万ドル規模のベトナム冷蔵・冷凍保管施設を建設。. <>

[3] Konoikeのウェブサイト <>

[4] Sagawa Vietnamのウェブサイト  <>

[5] Meito Vietnamのウェブサイト <>

[6] CLK Cold Storageのウェブサイト <>

[7]VNexpress(2023年)。Nichirei Logistics Groupがベトナムに新たな合弁会社を設立。. <>

[8] Indo Trans Logistics Corporationのウェブサイト。. <>

[9] Mitsubishi Logistics Corporationのウェブサイト <>

[10] The Investor(2023年)。セクターが急成長する中、Yokoreiが$52百万ドル規模のベトナム冷蔵・冷凍保管施設を建設。. <>

[11] VCCI(2025年)。日本のIgarashi Reizoがベトナム南部で$24百万ドル規模の冷蔵・冷凍保管プロジェクトを建設 <>

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