2026年1月20日
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ベトナムの果物・野菜市場では、経済成長に伴う中流階級の拡大により、高品質な輸入品への需要が構造的な高まりを見せている。2024年の輸入額は24億USDに達し、2025年も続伸する見通しの中、消費者の関心は単なる価格から、食の安全性、トレーサビリティ、そして自国では生産できない希少性へとシフトした。欧米やオセアニア諸国との自由貿易協定(FTA)の進展がこの傾向を後押ししており、品質と信頼をブランドの核心に据える外国企業にとって、持続的なビジネス機会が広がっている。
拡大を続ける輸入市場の深層
ベトナムの農業は伝統的に強力な輸出力を誇ることで知られているが、その裏側で輸入果物・野菜市場がかつてないほどの熱を帯びている。国家統計局が示すデータによれば、ベトナムの生鮮および加工野菜・果物の輸入額は過去10年間で右肩上がりの成長を続けており、2015年から2024年までの年平均成長率(CAGR)は16.6%という極めて高い水準を記録した。[1].
【図1】野菜・果物の輸入額推移
(十億USD)
出典:Vconnex 国立統計局
2024年の輸入額は24億USDに到達する見込みであり、2025年に入ってもその勢いは衰えず、最初の11か月間の暫定データですでに26億USDに迫る勢いを見せている。この数字は、コロナ禍等の外部要因による一時的な混乱を乗り越え、ベトナムの消費構造に輸入農産物に対する長期的な需要が深く根付いたことを示唆している。[2]
市場の供給構造を概観すると、最大の供給国としての中国が依然として3分の1以上のシェアを占めて強い存在感を放っているが、近年ではその内訳に変化が生じている。[3]第2位の供給国である米国は、健康志向の高まりを背景にピスタチオやアーモンドといったナッツ類で前年比77%増という驚異的な伸びを記録したほか、リンゴやサクランボ、ブドウといった果物でも着実に支持を広げている。[4].
【図2】国別輸入額シェア(2025年1~11月)
(26億USD)
出典:ISPAE(農業と環境に関する戦略政策研究所)
中流階級の台頭が変える消費の優先順位
また、豪州やニュージーランドからは、キウイフルーツやブルーベリーといった、熱帯気候のベトナムでは国内生産が困難な季節外れの高級品が安定的に供給されており、これらの国々がプレミアム市場において重要な地位を確立している。[5]こうしたプレミアムな需要を支えている最大の要因は、爆発的に増加する中流階級の存在だ。2026年までにベトナム人口の約30%が中所得世帯に分類されると予測されており、数千万単位の消費者が可処分所得の増加とともに食の優先順位を「量」から「質」へと明確に転換させている。[6].
かつては高級スーパーマーケットの限られた棚に並ぶ贅沢品であった輸入果物は、今や都市部の健康意識の高い世帯にとって、日常生活の一部となりつつある。[7].
【図3】品質ラベルが貼付された店頭の輸入果物
出典:Vconnex ドゥンハ農産物
消費者は単に外来の珍しさを求めるだけでなく、製品の原産地、安全性、そして信頼できる第三者機関による認証を厳格に評価するようになっている。[8]
【図4】品目別輸入額シェア(2025年1~11月)
(26億USD)
出典:ISPAE(農業と環境に関する戦略政策研究所)
特にハノイやホーチミンといった大都市圏では、農薬残留や不明瞭な流通経路への懸念から、透明性の高いサプライチェーンを持つ輸入品に対してプレミアムな価格を支払うことを厭わない層が確実に増加している。[9].
品目別に見ると、特に米国産のピスタチオやアーモンドは、その豊富な栄養価からスナック用途に留まらず、植物性ミルクや製菓の原料としても需要を伸ばしており、さらにはベトナム独自の文化である贈答品需要において「高級ナッツ」としての地位を不動のものにした。[10].
贈答文化と健康志向の融合
また、リンゴは依然として最も広く消費される輸入品の一つであるが、消費者の目は肥えており、より安全で味が良く、厳格な品質管理が行われている米国やニュージーランド産の特定の高級品種へと需要がシフトしている。[11]この輸入拡大の背景には、ベトナムが戦略的に締結してきた自由貿易協定(FTA)の恩恵も無視できない。EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)や、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の発効により、ナッツ、果物、野菜に対する関税が撤廃または大幅に削減された 。[12]
これにより、高品質な輸入品がより競争力のある価格で市場に流通するようになり、以前はニッチだった高級品が、大手スーパーマーケットや現代的な小売チェーンを通じて広範な中間層にリーチすることが可能となったのである。
外資ブランドに求められる持続的戦略
しかし、外資系ブランドがこの有望な市場で持続的な成功を収めるためには、特有の課題にも向き合う必要がある。中国をはじめとする近隣諸国からの低価格な輸入品との競争は激しく、物流面でのコールドチェーンの制約や、複雑な輸入手続きが利益率を圧迫するリスクは依然として存在する。[13]成功への鍵は、単なる輸出に留まらず、現地の消費者の期待に応える徹底したブランド構築にある。品質、安全性、原産地の透明性に裏打ちされたプレミアム性を明確に打ち出し、近代的な小売チャネルやオンラインプラットフォームを戦略的に活用することが求められる。さらに、現地の規制や商習慣に精通したパートナーとの提携を深め、ベトナムの文化や季節行事に合わせた現地化マーケティングを展開することで、輸入果物を「特別な日の贅沢」から「日常的な健康習慣」へと定着させることが、市場を勝ち抜くための最短距離となるだろう。
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| B&Company株式会社
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[1] 国立統計局、主な輸入品目(https://www.nso.gov.vn/)
[2] ISPAE、果物および野菜産業市場レポート、2025年12月 (https://thitruongnongsan.gov.vn/)
[3] ジャオ・トゥオン、2025年の最初の5か月間のピスタチオ輸入は77%増加(https://giaothuong.congthuong.vn/nhap-khau-hat-de-cuoi-5-thang-nam-2025-tang-77-410773.html)
[4] ベトナム投資レビュー、輸入果物が市場でより大きな足場を築く(https://vir.com.vn/imported-fruit-gaining-a-bigger-foothold-in-market-108233.html)
[5] イーストスプリング・インベストメンツ、ベトナムの中所得国ブームへの投資(https://www.eastspring.com/vn/en/insights/thought-leadership/investing-in-vietnam-s-middle-income-boom)
[6] ベトナムのホンサック誌、消費動向2025:輸入果物がベトナムの顧客を魅了し続けている(https://tapchivietnamhuongsac.vn/xu-huong-tieu-dung-2025-trai-cay-nhap-khau-tiep-tuc-hut-khach-viet-2212.html)
[7] PwC、消費者の声(https://www.pwc.com/vn/vn/publications/vietnam-publications/voice-of-consumer-2025.html)
[8] ハノイ農業環境局、ハノイ市における安全な野菜と果物の生産と消費の促進(https://sonnmt.hanoi.gov.vn/cat172/812/Day-manh-san-xuat-va-tieu-thu-rau-qua-an-toan-tren-dia-ban-Thanh-pho-Ha-Noi)
[9] ジャオ・トゥオン、2025年の最初の5か月間のピスタチオ輸入は77%増加(https://giaothuong.congthuong.vn/nhap-khau-hat-de-cuoi-5-thang-nam-2025-tang-77-410773.html)
[10] 投資新聞によると、ベトナムはアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどからリンゴを年間約2億4000万ドル輸入している(https://baodautu.vn/viet-nam-nhap-khau-tao-tu-my-australia-new-zealand-gan-240-trieu-usdnam-d215812.html)
[11] WTOセンター、EVFTAとベトナムの果物と野菜産業:関税に関する約束(https://trungtamwto.vn/chuyen-de/18940-evfta-va-nganh-rau-qua-viet-nam-cam-ket-ve-thue-quan)
[12] WTOセンター、CPTPP、ベトナムの果物と野菜セクター(https://wtocenter.vn/chuyen-de/15461-cptpp-and-vietnams-fruit-and-vegetable-sector)
[13] VnExpress、中国の果物と野菜がベトナムに集まる(https://vnexpress.net/rau-qua-trung-quoc-do-ve-viet-nam-4805765.html)



