ベトナム食肉市場、変革の時―「熱い市場」に吹く近代化の風

この記事では、ベトナムの生鮮食肉市場について、主要な特徴、推進要因、将来の動向など、包括的な分析を提供します。
Livestock Vietnam

2025年6月24日

B&Company

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2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

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旺盛な国内需要を背景に拡大を続けるベトナムの生鮮食肉市場。だが今、「消費者の意識変化」、「輸入製品の攻勢」、そして「産業構造の転換」が重なり、大きな転換点を迎えている。市場の最前線では伝統的な「熱々の肉」文化と近代的な流通の波が交錯し、新たな競争環境が生まれつつある。

依然として強い「豚肉経済」、だが課題も

2024年、ベトナムの食肉生産量は前年比5%増加の約490万トンに達する見通しだ。中でも豚肉は全体の約63%を占め、300万トン以上に達した(図1)。しかし、アフリカ豚熱(ASF)の蔓延は市場の安定成長に影を落とした。44省で発生したASFにより、約3万9,000頭の豚が淘汰され、サプライチェーンは混乱。 [1]農業農村開発省などの対策により、ようやく感染拡大は抑えられつつある。

[図1] 食肉カテゴリー別販売量(千トン)

食肉カテゴリー別販売量(千トン)

出典:Euromonitor

それでも、豚肉の市場規模は依然として大きく、2024年の小売売上高は183兆VND(約1兆円超)と全体の約半分を占める(図2)。ベトナムは東南アジア最大の豚肉消費国であり、1人当たり消費量は37kgと、前年から3kg増加した。 [2].

[図2] 食肉カテゴリー別小売売上高(兆VND)

[図2] 食肉カテゴリー別小売売上高(兆VND)

出典:Euromonitor

依然9割が「ノーブランド」—断片化する市場断片化された市場

ベトナムの食肉市場はその規模に反して依然として断片的だ。流通する肉製品の90%以上がノーブランド。 [3]消費者は新鮮で温かい「熱々の肉」を好み、ウェットマーケット(伝統市場)で購入することが一般的だ。この伝統的な取引ルートは市場全体の約80%を占め、近代的な小売は20%に過ぎない [4].

一方で、 CP, ヴィッサン Japfa Comfeed といった国内外のブランドは都市部を中心にモダントレードへの展開を強化し始めている。チルド・冷凍製品、加工品のラインアップを拡充し、次世代消費者層の取り込みを図る。

若年層で広がる「安全・安心」志向

近年、若年層を中心に「抗生物質不使用」、「オーガニック」、「農場直送」といった安全・安心志向が強まりつつある。これに伴い、トレーサビリティの確保されたチルド肉の需要が増加。現在は市場全体の1割程度にとどまるものの、今後の成長が期待されるセグメントだ [5].

都市部では利便性を重視したスライス済み、マリネ済み、調理済みの肉製品への需要も拡大。近代的小売チャネルを通じた販売は今後、食肉業界の成長ドライバーになる可能性が高い。

国内外プレイヤー、攻防戦の様相

ベトナムでは畜産業の近代化も進む。ベトナム大手の ダバコ , Masan, Tan Longに加え タイの CP やインドネシアの Japfa Comfeedなど海外勢も積極的に投資を拡大。 小規模な自給自足型から大規模・半工業型の農場への転換が加速している。

その象徴とも言えるのが日本の総合商社・双日による大型投資だ。Vinh Phuc省Tam Daoに完成したベトナム初のチルド牛肉加工工場は年間1万トンの生産能力を誇り、最先端の加工ラインと1万頭規模の肥育場を併設。 [6]サプライチェーン全体を一元管理するモデルケースとなっている。

[図3] チン首相によるビナビーフ工場視察(2025年3月)

Prime Minister Chinh visits the Vina Beef plant (March 2025)

出典: ヴィンフックテレビ

一方で、米国、豪州、ブラジルからの輸入食肉製品の存在感も高まる。消費者は「輸入品はより安全で高品質」と考える傾向が根強く、国内生産者は価格競争力だけでなく、品質とブランディングの両面での強化を迫られている。

変革期の市場に広がる新たな商機

ベトナムの食肉市場は依然として成長余地が大きいものの、市場の断片化と激しい競争が続いている。消費者習慣の変化とともに食肉バリューチェーンの近代化が求められ、農業から加工・流通までの各分野で迅速な対応が不可欠となる。

地場ブランドは伝統的な市場での強みを維持しつつ、トレーサブルで付加価値の高い製品開発に取り組む必要がある。海外勢にとっても、品質やブランド力を生かした市場攻略の好機は広がっている。ベトナムの「熱い市場」は今まさに次のステージに向かって動き始めている。


[1] 出典:Euromonitor

[2] 出典:INTECH Technology Innovation Investment(オンラインメディア)の記事 今後のベトナム食肉産業の展望 (2025年3月)、ホーチミン市党委員会の記事 ベトナムの豚肉消費量は世界第4位 」(2025年4月)

[3] 出典:ベトナム社会主義共和国政府事務局の記事「 ベトナムは豚肉消費量世界トップ10入り 」(2024年6月)。

[4] 出典:Euromonitor

[5] 出典:Euromonitor

[6] 出典:メコンASEAN(オンラインメディア)の記事 双日、タムダオに1万トンの冷蔵牛肉加工工場を開設 」(2024年12月)

 

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