2026年4月14日
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抽象的な
東南アジアにおける新たなデータ拠点として、ベトナムの存在感が急速に高まっている。背景にあるのは、デジタル経済の拡大とAI導入の加速、そして制度面の整備である。国内通信大手に加え、海外テック企業の参入も相次ぎ、インフラ投資は一段と活発化している。データセンターは単なる設備ではなく、AI時代の競争力を左右する基盤である。ベトナムは今、その起点に立っている。
小規模だが急拡大、埋まらぬギャップが呼ぶ投資
現時点のベトナムのデータセンターの稼働容量は104MWにとどまり、上海(1,071MW)やシンガポール(738MW)と比べればまだ小規模である 。 [1]しかし、注目すべきはその伸びしろだ。2030年以降には589MW規模へと拡大し、場合によっては1,000MWに迫るとの見方もある。とりわけホーチミン市(800%以上)や周辺工業地帯(1,000%超)での伸びは顕著で、地域の産業構造そのものを変える可能性を秘める 。[2]
【図1】データセンター稼働容量(MW)
出典:CBREレポート2025 [3]
需要の源泉は明確だ。インターネット利用者はすでに7,900万人を超え、電子商取引やデジタル金融、動画配信といったサービスが日常化した。 [4]そこにAI活用が加わり、データ処理の質と量の双方が一段と高度化している。従来型の設備では対応しきれず、高密度・低遅延の次世代インフラへの需要が急速に高まっている。
【図2】インターネット利用状況(普及率・利用者数)
出典:CBREデジタルレポート2025、DataReportal [5]
一方で市場構造は依然として寡占的だ。現在、データセンターは41施設あり、建設済み設備などを含めた総容量は221MWに達する。国営通信企業を中心とする5社が全体の約97%を占め、最大手のViettel IDCが41%、VNPTがこれに続く構図である。[6]こうした集中は参入障壁の高さを示す一方、市場の競争余地が限定されてきたことも意味する。ただし、2024年の法改正により外資による100%出資が可能となり、AlibabaやSTT、Hyosungなど海外勢の関心は一気に高まった。規制緩和は、これまで固定的だった競争の構図そのものを揺さぶり始めている。.
【表1】データセンター主要事業者
| 企業名 | 所有 形態 | 面積 (㎡) | 容量 (MW) | シェア
(%) |
| ヴィエッテルIDC | 国営 | 47,500 | 42 | 41 |
| VNPT | 国営 | 52,200 | 25 | 24 |
| CMCテレコム | 合弁 | 17,750 | 13 | 12 |
| FPTテレコム | 上場 | 8,837 | 12 | 11 |
| VNGクラウド | 民間 | 7,800 | 10 | 9 |
出典:CBREデジタルレポート2025 [3]
DX・AI・コスト優位、三位一体で需要押し上げ
第一の要因は、経済全体のデジタル化である。ベトナムのデジタル経済は2024年に約20%成長し、GDPの18%超を占めた 。[7] 電子商取引市場は250億USD規模に達し、小売の1割近くを担うまでに拡大している 。こうした取引の裏側で膨大なデータが生成され、インフラ需要を押し上げている。[8]
第二はAIの普及だ。AIは従来のITとは異なり、圧倒的な計算資源を必要とする。7GPUや専用設備、大規模データセットへの依存は高く、インフラの高度化なしには普及し得ない。ベトナム政府が掲げる「デジタル経済GDP比30%」という目標も、この前提に立っている 。 [9]
第三はコスト競争力である。土地、人件費、エネルギーといった基本条件で優位に立つベトナムは、アジアの中でも開発拠点として選好されやすい。これが国内外の投資を呼び込む土壌となっている。
国家主導と規制緩和、投資呼び込む制度設計
ベトナム政府の関与は、単なる規制にとどまらない。国家データセンターの整備により、基幹インフラの主導権を自ら握ろうとしている点に特徴がある。AIを電力や通信と同等の基盤と位置づける発想が透けて見える。
さらに、2024年の決議57号では、AI関連データセンターを戦略案件と位置づけ、許認可の迅速化や法人税優遇(5%)を導入した。これにより建設期間は9~12か月短縮される見込みである。低税率とリードタイム短縮は投資判断に直結する要素であり、公的投資と民間誘致の両輪が、成長基盤を着実に形づくりつつある。
AIが変える設計思想、インフラの質的転換へ
AIの進展は、データセンターの在り方そのものを変え始めている。従来のサーバー集積型施設ではなく、高速通信や専用ハードウェアを前提とした設計が求められるようになった。[10]
こうした変化を象徴するのが海外企業の動きだ。NVIDIAはFPTと組み、ハノイに2億USD規模のAIファクトリーを構築した。 [11]. Viettelもスーパーコンピュータ(約800台)やGPU(約6,000枚)の導入を進め、国内でAI処理を完結させる体制を整えつつある 。 [12]
また、クラウド市場は2029年に25億USD規模へ拡大する見通しであり、中小企業にとってもAI活用が現実的な選択肢となりつつある。[13]加えて、2028年にはデータセンターの電力消費の15~20%をAIが占めるとされ、こうした構造変化がインフラ需要を一段と押し上げるとみられる。10
ベトナムのデータセンター拡張は、単なる設備投資の話ではない。制度改革と外資流入が重なり、同国は東南アジアのデータ拠点としての地位を確立しつつある。
重要なのは、この動きがAI産業の競争力そのものに直結する点である。データをどこで処理し、どの程度自国で完結できるか。そこに経済の伸びしろが左右される。ベトナムの挑戦は、インフラ整備を超えた国家戦略の一環として位置づけるべき局面に入っている。
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[1] https://en.vietnamplus.vn/vietnams-internet-economy-projected-to-hit-36-billion-usd-in-2024-post304420.vnp
[2] https://en.vietnamplus.vn/vietnam-emerges-as-new-hub-for-data-centres-post333814.vnp
[3] https://mktgdocs.cbre.com/2299/2d6ae82e-b3e4-4a86-9310-537316353f64-1371598786/251111_CBRE_-_Data_Centre_in_V.pdf
[4] https://en.vneconomy.vn/vietnams-data-center-capacity-set-to-near-1000mw-by-2030.htm
[5] https://datareportal.com/reports/digital-2024-vietnam
[6] https://www.uob.com.vn/assets/web-resources/business/pdf/en/industry-report/uobv-breaking-the-digital-frontier.pdf
[7] https://en.vneconomy.vn/digital-economy-contributed-18-3-to-gdp.htm
[8] https://vietnamnews.vn/economy/1666895/viet-nam-s-digital-economy-continues-to-record-double-digit-growth-report.html
[9] https://blogs.worldbank.org/en/eastasiapacific/digital-economy-vietnam-building-foundations-future-growth
[10] https://www.trade.gov/market-intelligence/vietnam-data-centers
[11] https://vietnamnews.vn/economy/1654395/fpt-and-nvidia-ink-mou-to-build-200m-ai-factory.html
[12] https://english.mst.gov.vn/new-wave-of-data-center-investment-in-viet-nam-197250217105023061.htm
[13] https://www.techsciresearch.com/report/vietnam-data-center-market/4990.html

