2025年上半期のベトナムM&A情勢：新たなトレンドとB&Companyの戦略的サポート

2025年上期のベトナムM&A市場：回復期に見える新潮流

2025年11月14日

B&Company

2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

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ベトナムのM&A市場が再び活気を帯びている。投資家心理が改善し、制度改革が進む中で2025年初頭は不動産、テクノロジー、ヘルスケアを中心に回復基調が鮮明になった。Vinaconex ITCの所有権移転、UOA Vietnamの都市開発事業拡大、Tam Tri Medicalの買収等、停滞期に見られなかった大型案件も姿を見せ始めた。

総額は縮小、件数は底堅く

Grant Thornton Vietnamによると、2024年のM&A件数は447件で堅調だった一方、公表総額は約69億USDと前年比3割減。[1]背景には世界的な金融引き締めと1億USD超の大型案件の減少（2023年17件→2024年14件→2025年第1四半期1件）がある。

【図1】ベトナムのM&A取引額・件数

単位：百万USD

出典：Grant Thornton Vietnam

平均取引額も縮小（2023年5,230万USD→2024年4,150USD→2025年第1四半期2,350万USD）している。 グラント・ソーントン 取引は動きながらも、小型・中型案件中心へのシフトが一段と明確になったと言える。

一方、国内投資家の存在感は増している。公表取引額ベースで2024年は市場全体の29%を占め、2023年（16%）から大きく伸びた。[2]世界経済の不確実性を背景に外国勢が慎重姿勢を強める中、国内資本が市場を支えた格好だ。

【図2】M&A取引規模・件数（百万USD）

	2022	2023	2024	2025 Q1
平均取引額	48.5	52.3	41.5	23.5
取引件数	143	192	232	24
大型案件数（1億USD超）	14	17	14	1

出典：Grant Thornton Vietnam

(業種別では不動産が2024年の取引額の36%を占めて首位に復活。)

2022～2023年の低迷からの反転を示した。工業製造が24%、金融サービスが上位を維持した一方、消費財は鈍化。テクノロジーは市場全体に占める割合こそ小さいが、投資家の関心はむしろ強まっている。[3]

【図3】M&A取引額の業種別内訳 (%)

出典：Grant Thornton Vietnam

2025年初頭の新たなトレンド

回復の背景には、投資環境改善に向けた法規制改革が大きい。

不動産：10年ぶりの大改革で信頼回復

土地法、住宅法、不動産事業法の改正が相次ぎ、「外資の定義を明確化」、「土地取得の手続きを透明化」、「住宅所有資格の拡大」等、長年投資家心理を冷やした懸念材料が緩和された。停滞していた案件が再び動き始めた格好で、資金需要も回復傾向を見せる。[4][5][6]

工業製造・エネルギー：サプライチェーン再編が追い風

「政令19/2025/ND-CP」による優先案件の迅速審査、公共投資の継続、物流インフラ整備が追い風となり、既存資産の取得が参入経路として注目されている。 [7]

電源開発計画（PDP8）が目指すグリーン転換も、再エネ・天然ガス関連案件を後押しする。 [8]

は、増大する電力需要に対応するため、再生可能エネルギーと天然ガスプロジェクトに重点を置いています。グリーントランジションとエネルギー安全保障の推進により、投資家は市場参入の迅速化を図るため、既存資産の買収に意欲的に取り組んでいます。これらの経済要因と政策要因が相まって、ベトナムの産業セクターとエネルギーセクターは、2025年のM&A成長における確固たる柱となるでしょう。[9]

テクノロジー：国家戦略が市場をけん引

政府は2025年までにデジタル産業がGDPの2割を占めることを目標化。

医療・教育：人口動態が支える内需型成長

中間層拡大と高齢化が進む中、病院や介護施設、EdTech分野への投資が拡大。政府の医療近代化政策、教育デジタル化政策との整合性も高く、長期安定型投資の受け皿となりつつある。2025年新制定のデジタル技術産業法が投資促進税制やインフラ優遇を提供し、AIやクラウド等の高付加価値領域への資金シフトが進む。[10] [11]

市場は「小型化」しながらも深化

2024～2025年のベトナムM&A市場は取引総額こそ縮小したが、投資の質は着実に高まっている。[12]大型案件に依存しない構造へ移行し、国内資本や地域投資家が主体となって事業買収が増加。 [13]

制度改革の進展も相まって、不動産や製造業に加え、デジタル・医療などの新興産業への資金流入が広がる。金融環境が落ち着けば総額の回復余地は大きく、2025年は回復期から次の成長ステージへ踏み出せるかを左右する転換点となりそうだ。[14],

	取引名	業種	投資家	価値（百万米ドル）	取引の種類	出典
1	ビナコネックスITC	不動産	国内コンソーシアム	250-300	株式取得	ベトナム語
2	ハーバー・エナジーのベトナム資産	エネルギー	エンクエスト社	84	株式取得	ベトナム +
3	AIヘイ（シリーズA）	テクノロジー	地域投資家	10	資金調達ラウンド	Tuổi Trẻ News
4	タムトリメディカル	ヘルスケア	デール・インベストメント・ホールディングス / クアドリア・キャピタル	31	株式取得	投資家
5	ギャラクシー教育 – 資金調達	教育	East Ventures（シンガポール）	10	資金調達ラウンド	ストレーツ・タイムズ