ホーチミン市、ベジタリアンの首都へ。静かに広がる植物性志向

かつては宗教的な食生活の一部であった菜食主義は、社会現象にまで広がり、ホーチミン市を「ベジタリアンの首都」にした。

2025年7月14日

B&Company

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近年、東南アジア最大の成長都市・ホーチミン市で「食」の価値観に静かな変化が起きている。伝統的な仏教文化に根ざしたベジタリアン(菜食)料理が、今や健康志向や観光ニーズを追い風に、都市生活に定着しつつある。かつて宗教的な節食の一環であった菜食はいまやホーチミン市を「ベジタリアンの首都」たらしめる社会現象にまで拡大している。

仏教文化に根差す日常食、健康志向とともに浸透

ベトナムでは古くから仏教が浸透しており、信者は人口の約14%と宗教別で最多を占める。[1]もともと菜食文化は宗教行事や命日、月ごとの「菜食日」に家庭で食べるものとして定着していたが、ここ数年で様相が変わり始めた。背景には生活水準の向上と健康意識の高まりがある。とりわけコロナ禍以降、「身体にやさしい」、「免疫力を意識した」食事として、動物性食品を控えるスタイルが若年層を中心に広がっている。[2]

Statistaによる2024年2月の調査 16歳以上・2,757人対象)では約86%がベジタリアン料理を食べたことがあり、44%が週に数回は菜食を摂取するという結果が出ている。.[3] これは宗教だけでなく、ライフスタイルとして菜食が広がっていることを裏付けている。

店舗網は全国に拡大、ホーチミン市は質と多様性で先行

飲食店情報サイト 「Foody」によると、ベジタリアンレストランは全国64省市のうち51省市に展開(2024年5月時点)しており、普及率は80%に迫る。[4]その中心となっているのがホーチミン市だ。同市には屋台・家庭料理から高級レストランまで多様な菜食店が軒を連ね、料理の質も国際的に評価されている。米国の動物保護団体PETAが選ぶ「世界で最もベジタリアンに優しい都市」ではホーチミン市が2016年に第9位にランクイン。 [5]また、 「Hum Vegetarian」が世界のベジタリアン部門でトップ25に選ばれ、2023年も10位に名を連ねている トリップアドバイザーの「Travelers’ Choice Awards 2021」では同市の。

【図1】ベジタリアンレストラン数(%:2024年)

100%= 2,737店舗
Number of vegetarian restaurants

出典: Foody

観光資源としてのポテンシャルも拡大中

かつてベジタリアン観光は選択肢が乏しいとの理由で避けられがちだったが、近年は状況が変わりつつある。ベジタリアン向けのコミュニティサイト 「Happy Cow」によると、外国人向けのベジタリアンレストランは2022年の約1,400店から2024年には約1,894店へと約35%増加しており、対応店舗のデリバリー化も進んでいる。

ただし、同じく観光業界の「Exploring Vietnam Tourism」は既存の約70%の店舗が小規模経営であり、団体ツアー客の受け入れには限界があるとも指摘。観光業としての産業化にはインフラ面での整備が今後の課題となる。

ベジ・フレンドリーな都市へ、日本との親和性にも期待

ベジタリアンブームはホーチミン市がアジアの健康都市モデルへと近づく兆しとも受け取れる。コンビニやスーパーでも調理済みの菜食商品やビーガン向け食品の取り扱いが増加しており、消費者の利便性も年々高まっている。日本との親和性も高い。日本食は本来、野菜や大豆製品を多用するため、ベジタリアン対応との相性が良い。ヘルシー志向や「和食=クリーンな食」というブランドイメージは、現地市場でも十分に活かされうる。

都市政策と連携した市場整備がカギに

ベジタリアン文化の普及は単なる食の多様化にとどまらず、健康都市づくり、観光資源の強化、そして文化的価値の創出につながる。ホーチミン市がこの動きを政策としてどう支援するかは都市ブランディングの試金石でもある。外資系食品メーカーや健康関連スタートアップにとっても、ホーチミン市は成長するヘルス・エコノミーのフロントラインといえるだろう。


[1] 出典: バンTon G1つのo Chんん Phあなた (ベトナム政府国家管理委員会)報告書 ベトナムの宗教と宗教政策 ” (2022)

[2] 出典:Du Lich(ベトナムの旅行雑誌)、” 外国人観光客を誘致するためにベジタリアン料理を開発 」(2022年10月)

[3] 出典:Du Lich(ベトナムの旅行雑誌)、” 外国人観光客を誘致するためにベジタリアン料理を開発 」(2022年10月)

[4] https://www.foody.vn/ (グルメ・フードデリバリーアプリ)

[5] 出典:ベトナムタイムズ(ベトナム通信社)「ホーチミン市は 1つ アジアで最もビーガンフレンドリーな都市 」(2016年12月)

 

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