2026年9月10日
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ベトナム経済は2025年に約8%の成長を記録し、2027年に向けても内需主導の拡大が続く見通しだ。経済全体が成長しているベトナム市場であるが、市場の領域によって成長性や有望性も異なっている。今後、日本企業がどの領域に自社リソースを振り向けるかがより重要になるだろう。本稿では、ベトナム市場調査を専門とするB&Companyが、2027年に有望と考える5つのビジネス領域を根拠データとともに整理する。
2027年のベトナム経済見通しと市場環境の変化
内需の底堅さが2027年の市場成長を支える
2025年のベトナムの小売・サービス売上高は7,008.9兆VNDに達し、前年比9.2%増となった。同年のGDP成長率は8.02%である。この勢いは2026年に入っても続いており、1〜5月の小売・サービス売上高は3,185兆VND、前年同期比11.2%増を記録した。項目別では宿泊・飲食が13.3%増と最も高い伸びを示している。
図表:小売・サービス売上高の推移(2022〜2026年、1〜5月累計)

資料: Vietnamplus
この内需を支えるのが中間層の拡大である。今後10年で約3,600万人が新たに消費者層に加わると見込まれ、ブランド品、近代的な食品小売、ライフスタイル関連商品、カフェやカジュアルダイニング、プレミアム価格帯の飲食業態への需要が厚みを増す。人口に依存した「数の成長」から、支出単価が上がる「質の成長」へと市場の性格が変わりつつある。
2027年の有望ビジネスを選ぶ4つの判断軸
本稿では、①内需の厚み、②政策や公的資金の後押し、③日本企業の技術やノウハウが活きる接点、④先行プレイヤーが固め切っていない参入余地、という4軸で領域を絞り込んだ。以下の5分野は、いずれもこの条件を満たしている。
有望市場①ベトナム小売・飲食は出店基盤が拡大
都市鉄道・住宅開発で広がるベトナムの商圏
小売・飲食を有望と考える最大の理由は、「出店できる場所」そのものが増える点にある。ハノイ・ホーチミン市では都市鉄道の整備が進み、駅を核とした人の流れが生まれる。郊外では新興住宅開発が続き、生活圏に隣接した商業施設の需要が立ち上がる。モール開発も地方主要都市へ広がり、これまで進出先の選択肢が限られていた企業にとって、条件に合う区画を選べる環境が整いつつある。
出店を支える基盤も同時に厚くなっている。2025年1〜9月の非現金決済は件数で43.32%増、金額で24.23%増、QRコード決済額は150.67%増と急拡大した。決済の摩擦が小さくなることで、アプリ経由の注文、ロイヤルティプログラム、少額決済といった運営手法が現実的になる。
EC市場は2025年に約296億USD(前年比25%増)へ拡大し、フードデリバリー市場も2023年の14億USDから2024年には18億USDへ伸びて東南アジアで最も高い成長率を記録した。ベトナム政府も2030年までに小売・サービス売上高を年11〜11.5%、EC売上高を年15〜20%成長させる方針を掲げており、近代的流通への政策的な追い風が続く。
ベトナム外食市場は選別型の成長段階に入る
外食市場の規模は2026年に約759.9兆VND、前年比4.6%増と予測されている。飲食店舗数は33.36万店に達する見通しである。伸び率はコロナ後の急回復期に比べて落ち着いているが、これは市場が拡大を続けながら、より選択的な成長段階に入ったことを示している。
図表:飲食店舗数と外食市場売上高の推移(2018〜2026年予測)

出典:IPOS’s F&B report 2023 & 2025
この局面で優位に立つのは、店舗オペレーションを標準化でき、賃料・人件費・原材料費を管理でき、固定客を抱える企業である。日本企業にとっては、多店舗展開のオペレーション設計、品質管理、セントラルキッチンの運用といった蓄積が、そのまま差別化の要素になる。
有望市場②ベトナムのコト消費と体験経済の伸び
観光収入1,000兆VND超|広がる体験型消費
モノの豊かさが一定水準に達した市場では、支出の重心が体験へ移る。ベトナムでもこの動きは数字に表れており、2025年の国内旅行者は約1億3,000万人、外国人訪問者は約2,120万人、観光収入は初めて1,000兆VNDの大台に乗った。芸術・エンターテインメント・レジャー・映画といった分野が揃って高い伸びを示している。
さらに注目したいのがMICE市場【企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称】である。
ベトナムのMICE市場規模は約60億USDと推計され、2026年から2030年にかけて年12〜15%の成長が見込まれる。大規模イベント、音楽フェスティバル、展示会、会議と組み合わせた旅行、文化催事が増えることで、宿泊、飲食、交通、小売、広告へと波及効果が広がる。
消費者の意識調査もこの流れを裏づけている。ベトナムの消費者の半数超が体験型・プレミアム分野への支出を増やしたと回答し、8割はエンターテインメントイベント、質の高い外食、レジャー旅行を生活に欠かせないものと捉えている。
コンサートやフェス、外食への支出を増やした層は約4分の1で、Z世代とY世代で特に顕著である。所得の上昇分を、旅行、娯楽、イベント、外食、セルフケアといった情緒的価値のある活動へ振り向ける構造変化が進んでいる。エンターテインメント施設の運営、体験型サービス、イベント制作、関連するコンテンツビジネスは、2027年に向けて有望な領域である。
有望市場③ベトナムGX市場と防災・脱炭素の商機
気候リスクの拡大が生む継続的な設備投資需要
ベトナムでは近年、自然災害による被害が拡大している。経済損失は2024年に89.3兆VND、2025年には102.7兆VNDと初めて100兆VNDを超えた。人的被害も同様で、2024年には死者・行方不明者570人、負傷者2,204人を記録している。2020年の中部大洪水、2017年の台風ダムレイ、2024年の台風ヤギ、そして2025年に相次いだ暴風雨・洪水・地滑りが、こうした急増の背景にある。
図表:自然災害による人的被害の推移(2016〜2025年)

出所:NSO(ベトナム国家統計局)データ
インフラ、農業、住宅、地域の生活基盤にかかる負荷が高まるほど、気候変動への適応、防災・減災、強靭なインフラ、早期警戒システムへの投資は優先度を上げる。一過性の復旧需要ではなく、継続的な設備投資テーマとして定着する性質のものである。
円借款500億円のGXローンが商機を生み出す
政策と資金の裏づけも整いつつある。JICAは2026年3月30日、ハノイでベトナム政府との間で「グリーン成長及び気候に対する強靭性のためのGXプログラムローン」を対象とする円借款貸付契約に調印した。借款金額は上限500億円である。
この事業は、GXとグリーン成長のための財政・投資インセンティブに関する制度整備、NDC(国が決定する貢献)実施のための政策策定、気候変動適応策の推進を柱としており、財政支援と政策対話を通じてベトナムの気候変動対策目標の実現を後押しする内容となっている。
ODAが制度と政策の側を動かせば、その先に具体的な調達と事業機会が生まれる。省エネ設備、再生可能エネルギー、CO2排出量の算定・可視化、水管理、防災インフラ、環境コンサルティングといった領域で、日本企業の技術と実績が求められる。GXは2027年に向けた明確な成長市場として捉えたい。
有望市場④ベトナム医療は予防・健診へ軸足を移す
無料健診の制度化が検査・診断の需要を広げる
ベトナムの医療政策は、治療中心のモデルから予防中心のモデルへと舵を切っている。2026年からは、国民が年1回以上の健康診断またはスクリーニングを無料で受けられる方針が示された。制度として健診が広く提供されれば、スクリーニング、臨床検査、その後の健康管理までの需要が一気に立ち上がる。
実際、ベトナムの臨床検査市場は2024年時点で約18.4億USD、2030年には約67.9億USDに達すると予測され、2025年から2030年のCAGRは約24.31%に達する。検査機器、試薬、健診センターの運営ノウハウ、データ管理システムまで裾野は広い。
高齢化と生活習慣病が予防医療市場を広げる
需要側の構造も予防医療を後押ししている。心血管疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病といった非感染性疾患は死因の約8割を占め、特に高血圧と糖尿病では未治療の層が厚く、早期発見と定期的な検査へのニーズが大きい。加えてベトナムは高齢化のスピードが速く、今後10年以内に国民の5人に1人以上が60歳を超える見込みである。定期健診、慢性疾患のモニタリング、がん検診、長期的な予防ケアの必要性は着実に高まる。
こうした需要を支える基盤として、AI、電子カルテ、スマートホスピタルの導入も進む。早期発見の精度が上がり、リスクの継続的なモニタリングと個別化された健康管理が可能になる。検査・診断機器、健診事業の運営支援、企業向け健康管理サービス、デジタルヘルスは、いずれも日本企業が強みを発揮できる領域である。
有望市場⑤ベビー用品と産後ケアのプレミアム化
出生数が減っても子ども一人あたり支出は増える
ベビー関連市場は、出生数の減少と市場拡大が同時に進む点で特徴的である。2025年の合計特殊出生率は1.93、0〜14歳人口の比率は22.8%まで低下した。それでも子ども一人あたりの支出は増加を続けており、特に都市部と中間所得層でその傾向が強い。親はオーガニック、輸入品、栄養強化、低アレルゲン、安全認証といった基準を重視するようになり、子どもの健康と発達への投資に積極的である。
図表:ベビーケア用品の市場規模(2025年・2026年・2031年)/CAGR4.9%

出典:モルドール・インテリジェンス
市場は数量の拡大ではなく、品質・安全性・プレミアム栄養を軸とした成長へ移行している。ベビーケア用品市場は2026年から2031年にかけて年平均4.9%で拡大する見通しで、粉ミルク市場は2026年の13.0億USDから2031年には15.9億USDへ伸びる。日本製品が持つ安全性と品質の評価は、この市場で明確な優位性になる。
産後ケアが高付加価値サービスとして成長する
サービス面ではさらに動きが速い。ベトナム初の5つ星をうたう産後ケアセンターが登場し、ホテル並みの宿泊環境に育児支援、栄養管理、授乳サポート、回復ケア、医学的モニタリングを組み合わせた14日間・28日間のプログラムを1億9,800万VNDから提供している。私立病院もプレミアム出産パッケージ(5,990万〜6,990万VND)や産後サポートへとサービスを拡充中だ。産後ケアは基礎的な医療の枠を超え、医療・回復・栄養・ホスピタリティを束ねた複合モデルへ発展しつつある。日本の産後ケアや施設運営のノウハウは、この形成途上の市場と親和性が高い。
半導体・データセンター・物流も5年先の有望領域
消費者向け以外にも、今後5年で有望なテーマは多い。半導体・先端エレクトロニクスでは、2030年までに高度人材5万人以上、2050年までに設計会社300社以上、製造工場3か所、後工程・テスト工場20か所という国家戦略が掲げられ、大手電機メーカーによる15億USD規模のテスト工場が2027年に稼働する予定だ。組立中心から設計・テスト・精密製造へと付加価値を高める流れが強まる。
データセンターとAI関連インフラも拡大が続く。デジタル経済を2030年までにGDPの約30%とする目標のもと、データセンター市場は2025年の約10.4億USDから2031年に約31.9億USDへ(CAGR約20.5%)成長する見通しで、電源設備、冷却機器、クラウド移行支援まで関連需要は広い。サイバーセキュリティ市場も2025年の3.10億USDから2031年には7.01億USDへ拡大が見込まれる。
物流・コールドチェーンと工業用不動産も堅調である。貨物・物流市場は2026年の555億USDから2031年に763.9億USDへ(CAGR6.6%)、うちコールドチェーンは2024年時点で約12億USD、2030年まで年約9%の成長が予測される。2025年のFDI認可額は380億USDを超え、実行額は276.2億USDと5年で最高水準に達しており、工業団地やレディビルト工場(Ready-Built Factory:東南アジアなどの海外工業団地で主流となっている、「すでに完成しており、すぐに稼働・入居できる賃貸工場)への需要も続く。
2027年のベトナム有望5市場と検討すべき論点
2027年に向けて有望な5分野は、小売・飲食、コト消費、GX・気候変動対策、医療・ヘルスケア、ベビー・産後ケアである。共通するのは、都市化による生活基盤の刷新、所得上昇にともなう支出構造の変化、政府方針と公的資金による後押しという3つの駆動要因であり、いずれも今後5年単位で続く構造的な変化に根ざしている。
もっとも、市場が有望であることと、自社が勝てることは別の問題である。同じ小売・飲食でも、狙う都市、価格帯、パートナーの選び方で結果は分かれる。検討にあたっては、対象セグメントの規模と成長率、競合の布陣、規制と許認可、現地パートナーの実力を一次情報で確かめておきたい。
B&Companyは20年にわたりベトナムでの市場調査と進出支援を手がけ、700件を超えるプロジェクトを完了してきた。市場規模の推計、競合・チャネル調査、消費者調査、パートナー候補の探索と面談設定まで、検討段階に応じた支援が可能である。ベトナム市場での次の一手を検討する際は、ぜひ相談いただきたい。
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2008年以来ベトナムにおける市場調査を専門とする初の日本企業です。業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供しています。また、最近では、1,000,000社以上のベトナム企業のデータベースを開発しており、これを利用してパートナーを検索したり、市場を分析したりすることができます。. ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。. info@b-company.jp + (84) 24 3978 5165 |
