2026年9月9日
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ベトナムは1億人規模に及ぶ若い人口と消費市場の拡大を背景に、日本企業にとって魅力的な進出先・事業拡大先となっている。直近ではベトナム現地企業との提携、出資、M&Aを通じた進出相談も多くなっている。
一方で、事前の市場調査段階でのつまずきが、提携先選定や投資判断といった後工程に響き、結果的に事業計画そのものを見直さざるを得なくなるケースも少なくない。
本稿では、ベトナム市場調査で実際によく見られる5つの失敗パターンを取り上げ、それぞれがなぜ起きるのか、どう避ければよいのかを整理する。
なぜベトナム市場調査は失敗しやすいのか
ベトナム市場調査が難しい背景には、いくつかの構造的な要因がある。まず、ベトナム政府や業界段階による公的統計の整備状況が日本ほど整理されておらず、業界別・地域別の詳細データが十分に揃わない領域が多い。また、都市部と地方の消費行動の差が大きく、経済成長のスピードが速いために、数年前のレポートがすでに実態と乖離しているということも珍しくない。
加えて、小売や流通の現場では非公式なチャネル(個人商店やSNS経由の販売など)が依然として大きな割合を占めており、公開情報だけでは市場の全体像を捉えきれない。
こうした環境では、日本国内で市場調査を行う感覚をそのまま持ち込むと、精度の高い意思決定材料を得られないまま計画が進んでしまいやすい。以下では、その具体的な失敗パターンを見ていく。
失敗①:二次データだけでベトナム市場調査の結論を出してしまう
公開統計や既存の業界レポートは、市場の概況を把握する初期段階では有効だが、更新頻度や粒度に限界がある。特にベトナムでは、統計の反映にタイムラグがあることや、業界によっては地方のデータがほとんど存在しないことも多く、二次データのみで需要規模や競合状況を判断すると、実態と乖離した前提のまま計画が進んでしまう。
この失敗を避けるには、デスクリサーチで得た仮説を、現地でのヒアリングや店舗観察、簡易的な定量調査などの一次情報で検証する工程を組み込むことが欠かせない。二次データはあくまで「仮説を立てるための材料」であり、「結論を出すための根拠」ではないという位置づけを最初に明確にしておくとよい。
失敗② 都市部の傾向を全国市場に当てはめてしまう
ベトナム市場調査では、情報の得やすさからハノイ・ホーチミンという二大都市のデータに偏りがちである。都市部が主な日本企業にとっての大きなマーケットであることは事実だ。しかし、両都市および地方都市・農村部とでは所得水準や購買行動、意思決定のプロセスに大きなな差があり、都市部の傾向をそのまま全国に当てはめると、需要規模を過大に見積もってしまうことがある。
この失敗への対処としては、調査の初期段階で「どの地域を対象にするか」を明確に定義し、都市部と地方で異なる調査設計(対象者の属性やヒアリング項目)を用意しておくことが有効である。全国展開を視野に入れている場合ほど、地域差を前提とした調査設計が結果の精度を左右する。
失敗③:目的が曖昧なままベトナム市場調査を発注してしまう
「市場の状況を知りたい」という漠然とした目的のまま調査会社に依頼してしまうと、報告書の内容自体は充実していても、実際の意思決定にどう使えばよいか分からないという状態に陥りやすい。調査は本来、「何を調べるか」ではなく「その結果をもとに何を意思決定するか」から逆算して設計すべきものである。
例えば、進出可否の判断材料にしたいのか、提携先候補を絞り込むための材料にしたいのかによって、必要なデータの粒度も調査手法もまったく異なる。発注前に、自社が調査結果をどの意思決定に使うのかを社内で言語化しておくことが、調査の質を左右する最初の分岐点になる。
失敗④:日本の成功モデルをそのままベトナム市場調査に持ち込んでしまう
自社が日本や他国で成功させた事業モデルを、価格帯や流通構造、規制環境の違いを十分に検証しないままベトナムに移植してしまうケースも多い。例えば、日本国内では有効だった価格戦略が、可処分所得の水準や購買習慣の違いから、そのままでは受け入れられないということもある。
こうした失敗は、調査段階で「自社モデルの前提条件」を洗い出し、それぞれの前提がベトナム市場でも成立するかを個別に検証するプロセスを踏むことで防ぎやすくなる。成功モデルを参考にすること自体は有効だが、前提条件の違いを飛ばして結論だけを移植すると、需要を見誤るリスクが高まる。
失敗⑤:AIで調べただけでベトナム市場調査を済ませてしまう
生成AIに質問すれば、市場概況や基本統計はすぐに整理された形で返ってくる。しかし、情報の非対称性が大きいベトナム市場では、AIの回答が公開データの寄せ集めにとどまり、更新の遅れや地方・非公式セクターの実態を十分に反映できていないことがある。この点を検証せずに意思決定の前提としてしまうと、実態とズレたまま計画が進んでしまう。
AIは、初期段階での論点整理や仮説立てのツールとしては非常に有効である。一方で、その回答をそのまま結論として扱うのではなく、現地の一次情報や専門家の知見と突き合わせて検証するという一手間を、調査プロセスに組み込んでおく必要がある。
ベトナム市場調査で失敗しないための3つの視点
ここまでの5つの失敗は、いずれも「情報の出所」と「調査の目的」を曖昧にしたまま進めてしまうことに起因している。着手前に整理しておきたいポイントは大きく3つある。
第一に、調査結果をどの意思決定に使うのかを先に定義すること。
第二に、二次データと一次情報、都市部と地方のデータをそれぞれ組み合わせ、単一の情報源に依存しない設計にすること。
第三に、AIを含む効率化ツールは仮説構築の段階で活用しつつ、最終的な判断材料は現地の実情に基づいて検証するという役割分担を明確にしておくことである。
実際にどの手法を組み合わせるべきかは、調査目的によって変わる。代表的な手法の特徴を整理すると、以下のようになる。
ベトナム市場調査手法の比較
| 手法 | 主な特徴 | 期間の目安 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| デスクリサーチ(二次データ収集) | 統計・業界レポート・公開情報を収集し、市場の概況を把握する | 1〜2週間 | 初期の仮説立て、市場規模の大まかな把握 |
| 定量調査(アンケート) | 一定数の対象者から数値データを収集し、傾向を統計的に把握する | 3~4週間 | 需要規模の推定、購買行動の全体傾向の把握 |
| 定性調査(インタビュー・グループインタビュー) | 少数の対象者に深く聞き込み、背景にある心理や意思決定プロセスを探る | 4~6週間 | 購買理由の深掘り、商品・サービスへの反応の見極め |
| 現地視察・店舗観察 | 実際の店頭や商流を目視で確認し、公開情報にない実態を把握する | 数日〜1週間程度 | 非公式チャネルの実態把握、競合の店頭施策の確認 |
| 有識者・業界関係者への取材 | 業界の内部事情に詳しい人物から、現場感覚に基づく情報を得る | 数日〜2週間程度 | 規制動向や業界慣習など、公開情報に出ない情報の補完 |
出典: B&Company
一つの手法だけで結論を出そうとせず、目的に応じてこれらを組み合わせることが、失敗①(二次データへの依存)や失敗②(都市部データへの偏り)を同時に防ぐことにもつながる。この3点と手法選定の視点を押さえておくだけで、調査の精度と、その後の意思決定の確度は大きく変わってくる。
まとめ:ベトナム市場調査を成功させるために
ベトナム市場調査における失敗の多くは、情報収集の手段そのものよりも、目的設定や情報源の組み合わせ方に起因している。二次データ・都市部データ・自社の過去モデル・AIの回答のいずれも、単独で使えば有効な材料になるが、それぞれの限界を理解しないまま結論の根拠にしてしまうことがつまずきの原因になる。
自社での判断が難しい部分については、現地の実情を踏まえた専門家の知見を借りるという選択肢も、精度を担保する一つの方法である。
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| B&Company
2008年以来ベトナムにおける市場調査を専門とする初の日本企業です。業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供しています。また、最近では、1,000,000社以上のベトナム企業のデータベースを開発しており、これを利用してパートナーを検索したり、市場を分析したりすることができます。. ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。. info@b-company.jp + (84) 24 3978 5165 |

