事例紹介:オカモト エンジニアリング ベトナム

日系企業への積極営業による部品企業の成長

現在と異なる状況もあるが、今後進出する企業や進出期で苦労されている企業の参考事例として同社の同意の下、紹介したい。B&Companyは進出後から10年にわたりOEVNを支援してきた。

2025年5月30日

B&Company

お知らせ / ハイライトコンテンツ / 最新ニュース&レポート

コメント: コメントはまだありません.

2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

本記事は英語で作成されており、他言語版は自動翻訳を利用しています。正確な内容につきましては、英語版記事をご参照ください。弊社はできる限り正確な情報の提供に努めておりますが、本記事のご利用は利用者ご自身の判断と責任のもとでお願いいたします。また、本記事に記載されている考察や将来展望等は、各研究者の個人的な見解に基づくものです。  

 

オカモト エンジニアリング ベトナム (Okamoto Enginnering Vietnam:OEVN)は埼玉県で創業50余年の株式会社オカモトを親会社とし、2013年にハノイ郊外のビンフック省に設立された。

以降、経営上の困難が度々あったものの順調に営業を拡大し、現在では親会社に大きく貢献、一翼となっている事例を紹介する。現在と異なる状況もあるが、今後進出する企業や進出期で苦労されている企業の参考事例として同社の同意の下、紹介したい。

 

創業前夜

- 株式会社オカモトは1971年埼玉県与野市(現さいたま市)の小さなネジ工場としてスタートした。現在、さいたま市桜区に本社・工場を移転、2代目岡本知典社長のもと社員約30人の体制で旋盤を中心とした超精密金属・樹脂部品を中心に展開する企業である

- 2010年頃、国内の営業状況は安定していた。創業者は2002年から会長に退き現社長に任せる体制となっていた。一方で内部には課題があった。先代から残る年配社員と若手世代間の摩擦である。積極的に教わろうという姿勢を見せない若手に対し、数十年も世代の異なる先輩社員は多くを伝えようとはしなかった。社内の意思疎通や技術伝承は十分でなく、新たな取り組みが進みにくい状況にあった。社長は新たな風を入れる必要性を感じ、技能実習生制度を活用することにした。

- 2012年にはベトナムから最初の実習生を2名採用し、翌年以降も徐々に拡大していった。効果は大きかった。はきはきと素直に質問し、学ぶ姿勢を見せる実習生は工場に活気をもたらし、教えようという態度も広がったのである。

- しかし、当時実習生は3年で帰国しなければならない制度だった。これではせっかく育てても人材の行き場がない。そこで、ベトナム法人の設立を決めた。

創業直後

従来ベトナムの工業団地は約50年間の土地リースが原則であり、企業自ら工場建屋を建設するモデルが主だった。1万平米以上など区画は大きなものしかなく、立地にもよるが、土地取得と工場建設の費用は億単位となる。中小企業の進出が進む中でよりリスクの低い選択肢として、建築済工場建屋内部の区画を借りるという、レンタル工場のサービスが広がりつつあった。

同社もビンフック省カイクアン工業団地内に出来たレンタル工場において、2013年に社員5名、機械5台でベトナム工場を開始した。目的はこの工場で売上や利益を上げることではなかった。帰国実習生をベトナム法人の従業員とすれば、日本に配置転換することができる。そうすれば技能実習生の3年という制約を超えて、育てたベトナム人従業員を活用していくことが可能になる。

そのような限られた規模・目的であったため、営業上のプレッシャーは課されず、まずは安定操業の確立が目標であった。帰国実習生を中心に採用されたスタッフは日々の業務構築に励み、ゆっくりではあるが生産ラインは動き始めた。しかし年間売上は600万円ほどで、投資回収にはほど遠い状況であった。

飛躍のきっかけは設立2年後、外部から採用された岡本牧人さん(現社長)の登場だった。ちなみに、日本の岡本社長は現地法人の会長である。二人に親戚関係はなく同じ名字であるのは偶然なのだが、紛らわしいので岡本会長、牧人社長などと呼ぶこととする。

入社時、牧人社長は35歳でベトナム国内の日系製造工場で数年の経験があり、妻がベトナム人でベトナム語が話せるなど理想的な人材であった。多くの候補者から選ばれてゼロからの立上げ意欲もあった。しかし入社してみると、売上が月80万円ほどしかないことに愕然とした。会長からはゆっくりやればいいと言われていたが、「とても自分の給料は出ない」と正直思った。

事態を打開するため、まずは現場改革に取り組んだ。ベトナム人のチームはリーダもおりまじめだったが、経験が浅く多くの課題が残されていた。また、経理などの会社管理体制も不十分で、例えば在庫管理など現場、管理両面にまたがる課題もあった。これらを一つ一つ解決していった。

本格成長

一方で売上拡大は最重要課題である。岡本会長、牧人社長に加え、営業特化の人材も採用され、展開された。

同社の発展を考えるときに、営業力が強いことは大きな要因であることに間違いはない。営業力の中身は営業・技術・生産が協調しての新規案件開発である。新規案件には新規の技術が必要であり、往々にして設備投資も求められる。売上が本当に立ち上がるのか、また持続するのか、確実にはわからない中でリスクを取って投資していかなければチャンスを逃す。リスク低減には日本政府や自治体の各種補助金も活用された。

同社の主力は精密金属部品であるが、差別化できるのは特に精密なもの・難易度の高いものとなる。顧客業界は光学、ホビー、医療などだが最終ユーザはB2Cとなることが多い。そのため毎年、新商品を出して顧客の購買意欲を促進していく必要がある。新たな機能や形状、仕様が必要であり、部品メーカには商機であるとともに挑戦の機会ともなる。応えていけば毎年仕事が広がっていく。

結果として、最初は小規模だった組織が劇的に拡大し、人数では親会社を凌ぐまでになった。

B&Companyの支援

B&Companyは進出後から10年にわたりOEVNを支援してきた。顧問契約であったため扱った内容は多岐にわたるが、初期に扱った中には次のようなことが含まれる。

  1. 経理業務の整理

初期にローカル会計事務所に依頼していた経営管理業務を社内化。切替にあたっては会計事務所の協力を得られるように慎重に対応、それでも足りない書類を求めたり修正、作成したり時間をかけて移行

  1. 経理課題への対応

日本からの融資が多額だったため、様々な経営管理課題が発生。為替差益で収益がぶれることや、日本法人への返済計画などが必要だった。このため借入の資本組入も実施。在庫管理や切粉管理なども困難な課題だった。ベトナム特有の不合理な税務会計ルールが多く時間をかけて解決していった

  1. 環境規制強化への対応

環境規制が当時強化され、対応した書類作成や当局対応

  1. 人事支援

幹部人材の採用基準・方法の設計と面接参加などの実施支援。賃金体系や評価体系の構築、労務問題の解決など

営業・生産に集中するには管理面の課題が解決されていることが重要だが、そこにとどまらない効果もある。正しい管理は有益な情報を生み、これを活用することで好循環が生まれる。

「どの顧客がどの程度の利益をもたらしているか、また各投資がキャッシュフローや利益にどのように寄与しているか「見える化」されるのが助かる」

と牧人社長は振り返っている。

企業データベースの活用

部品企業が自社で出来ないことは色々あり、多くの協力会社が必要となる。特に新たな取り組みがそのきっかけとなることがある。当初、OEVNは公開されたディレクトリーや偶然の出会いに頼ってこれらを開拓してきた。現在ではB&Companyの企業データベースを利用している。

B&Company のE-DBは2018年に運用開始、2016-23年の8年間のデータが現在利用可能(詳しくはこちら)。日系などを含む90万社が約500の業界に分かれ、候補企業の抽出が可能となった。 日本企業を含む90万社を約500業種に分類し、候補企業の抽出が可能です。

自社だけでは把握しきれなかった潜在的パートナー企業や取引先の発掘にも成功。特に、メッキ業界など特定分野のパートナー探索においては有用だった。

日本法人への波及効果、今後の展望

現地での成長は、数字にも表れている。現時点では工場面積が約2400平米へ拡大。機械は75台、従業員数は89名といずれも初期の10倍以上となっている。売上や利益の停滞する不況期もあったのだが、乗り越えてこられたのは新規案件に取り組み続けたからであろう。

では、ベトナムが成長した間、日本法人はどうなったのか。日本経済が停滞する中で、日本の市場縮小を海外展開で補おうという発想は、むしろ大企業の目線なのかもしれない。中小企業では実は違った結果となることが多い。

オカモトの場合は、ベトナム進出に前後して日本本社側の組織体制も強化され、日本法人の社員数は進出当初の1.5倍、売上も同様に成長した。

特筆すべきは現地で獲得した顧客基盤である。ベトナムで獲得した顧客との取引が日本でも実現、日本法人の売上増につながった。ベトナムを起点とした活動量の増加が、日越の営業において相乗効果を生んだ。

一方、ベトナムから新たに採用された若手スタッフが、エネルギッシュでハキハキと働く姿勢を持ち込んだ。既存の社内文化に新たな風を吹き込んで、全体の雰囲気が刷新されたのは既に述べたとおりである。ベトナム進出が経営上の大きな一手となり、現場の生産性向上とともに、経営全体の活性化にもつながっている事例である。

*ご注意: 本記事の情報を引用される場合は、著作権の尊重のために、出典と記事のリンクを明記していただきますようお願いいたします。

B&Company株式会社

2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。また最近では90万社を超える在ベトナム企業のデータベースを整備し、企業のパートナー探索や市場分析に活用しています。

お気軽にお問い合わせください

info@b-company.jp + (84) 28 3910 3913

 

関連記事

サイドバー:
ニュースレターを購読する