ベトナムの塗料・塗装市場：競争と成長の可能性

17 2月 2025

By: B& Company

塗料・塗装市場の現状と課題

ベトナムの塗料・塗装市場は建設、木材製造、工業生産といった幅広い分野で重要な役割を果たしている。これらの製品は美観を向上させるだけでなく、特に鉄鋼や造船産業において材料の劣化を防ぐ保護機能を担う。

VPIA（ベトナム塗料インキ協会）の報告によると、2023年の市場規模は約15.6億USD、生産量は約4.5億ℓ[1]。装飾用塗料が市場の54%を占め、次いで木工用塗料が20%を占めている[2]。一方、輸出は全体のわずか6%に留まり、国内需要を中心に展開されている[3]。

【図1】塗料・塗装製品の生産量の内訳（%：2023年）

塗料・塗装製品の生産量の内訳

出典：VPIA

しかし近年、塗料・塗装市場は大きな後退を経験した。2023年は20年ぶりに2年連続で業績が落ち込み、生産量が前年比21%、生産額が19%減少した[4]。建設業や木材製品の需要減少が影響しており、新築住宅供給が10年ぶりの低水準に達したこと[5]、木材製品の輸出が23%減少したことなどが背景にある[6]。

競争環境と市場の集中度

塗料・塗装市場は国内外の大手企業が熾烈な競争を繰り広げている。2022年には総売上高約27億USDのうち55%を外資企業が占めた[7]。また、大手企業67社が市場収益の71%を生み出すなど高い市場集中度である[8]。Akzo Nobel Vietnam（オランダ）、Jotun Vietnam（ノルウェー）、4 Oranges（英国）、Nippon Paint（日本）などの外資企業は製品の品質を活かし、多くの市場セグメントを支配している。

【図2】塗料・塗装市場の内訳（%：2022年）

塗料・塗装市場の内訳

出典：B&Company

Nippon Paintは防水性や耐久性に優れた建築用塗料、高級工業用塗料、船舶用塗装で特に高い評価を受けている。一方、地場メーカーは中価格帯市場を中心に展開し、革新技術を取り入れた製品で競争力を高めている。例えば、Kova Paintはハイテク塗料を提供し、国内市場で存在感を示している。

【図3】Nippon Paintの製造工場（ビンフック省）

Nippon Paintの製造工場（ビンフック省）

出典：Nippon Paint

今後の成長機会

厳しい競争や最近の市場変動にもかかわらず、ベトナムの塗料・塗装市場には成長の可能性が広がっている。2024年には建設業や工業製造業が回復し、工業生産指数（IIP）は前年比10%増加[9]。木材製品の輸出も20%以上増加した[10]。こうした需要回復を背景に市場は新たな成長機会を迎えている。

また、環境や健康への関心の高まりから低揮発性有機化合物や水性塗料の需要が増加している。Nippon Paintを始めとする大手企業は環境配慮型製品の生産能力拡大に注力し、業界全体の変革をリードしている。

政府の支援と持続可能性

ベトナム政府も塗料・塗装市場の成長を後押ししている。「化学産業発展に関する2030年までの戦略、2040年までのビジョン」（726/QD-TTg）ではハイテク塗料への投資促進や原材料の国内供給強化を掲げている。この政策は内資企業と外資企業の双方に成長機会を提供し、持続可能な市場環境の構築を目指している。