再エネ軸に広がる日本の対ベトナム投資、成長市場で存在感

日本の投資がベトナムのエネルギー分野で存在感を高めている。特に再生可能エネルギーの分野での展開が加速しており、同国のエネルギー構造の転換を後押ししている。電力需要が年々高まるなか、戦略的パートナーである日本との連携が持続可能な成長の鍵を握っている。
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2025年4月24日

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2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

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日本の投資がベトナムのエネルギー分野で存在感を高めている。特に再生可能エネルギーの分野での展開が加速しており、同国のエネルギー構造の転換を後押ししている。電力需要が年々高まるなか、戦略的パートナーである日本との連携が持続可能な成長の鍵を握っている。

投資額で第2位、注目高まる再エネ分野

2023年、日本からベトナムへの新規直接投資額は約70億USDに達し、シンガポールに次ぐ第2位となった。[1]累積投資額では約630億USDに上り、エネルギー分野への投資は70億USD以上と、製造・加工業に次ぐ規模を占める。[2].

【図1】日本の対ベトナム直接投資(%:2021年)[3]

(100%=629億USD)
【図1】日本の対ベトナム直接投資(%:2021年)

資料:Cinematone[9] 在大阪ベトナム総領事館

【図2】ベトナムの電力供給構成(%)

【図2】ベトナムの電力供給構成(%)

資料:VEA(ベトナムエネルギー協会)

2024年時点で、ベトナムの発電能力は84,360MW 。石炭(33%)や石油・ガス(10%)といった化石燃料が主力だが、水力(28%)と風力・太陽光などの再エネ(27%)も高い比率を占める 。今後、再生可能エネルギーへの依存度がさらに高まるとみられている。[4].

PDP8が後押し、日本からの大型投資も進展

2023年5月にベトナム政府が策定した電力開発計画8(PDP8)では2030年までに発電量の50%以上を再生可能エネルギーで賄うことを掲げた。[5]これを受け、日本からの投資は一段と活発化。従来は1億USD未満が中心だったが、PDP8後の新規プロジェクトでは20億USD規模に拡大している。

【図3】PDP8以前の日本によるエネルギー投資案件例

案件名 資金提供元 投資額

(百万USD)

投資年 所在地
ブンアン2石炭火力発電所 国際協力銀行 636 2020 ハティン
ニントゥアン陸上風力発電 国際協力機構 25 2022 ニントゥアン省
コックサン水力発電所 京電力リニューアブルパワー 18 2018 ラオカイ

資料: B&Company

【図4】PDP8以降の日本によるエネルギー投資案件例

案件名 資金提供元 投資額

(百万USD)

投資年 所在地
Block B ガス田開発 三井石油開発 740 2024 マレー・トーチュ海盆
クリーンエネルギー事業(複数案件) 国際協力銀行、民間企業 20,000 2025 該当なし
ニントゥアン第2原子力発電所 国際原子力開発、日本原子力研究開発機構 (建設支援扱い) 2036~2040年 ニントゥアン省
浮体式LNG受入基地・天然ガス火力発電所 東京ガス、九州電力 該当なし 2029 タイビン省

資料: B&Company

成長を支える制度と市場の動向

ベトナム経済はエネルギー消費との相関性が高く、GDPが1%成長するごとに電力需要は1.5%増加するとされる。[6]計画投資省によれば、2025年には電力需要が前年比12~13%増加すると予想されるが、供給増加率は5%にとどまる見通しだ 。

【図5】政府によるエネルギー分野支援策

政策名 概要
政令第58/2025/NĐ-CP号 2025年3月 再生可能エネルギーと新エネルギー電力の開発に関する電気法のいくつかの条項の詳細 風力エネルギー

• 建設期間中の海域使用料:最大3年間免除+その後9〜12年間は50%減額

• 総発電量の20%以内での余剰電力売電が認められる

• 融資返済期間中に最低70〜80%の発電契約を保証

風力エネルギー

• 上記の優遇に加え、風力発電特有の融資条件(最大15年の契約確保)あり

屋上太陽光発電

• 出力100kW未満の家庭、個人は事業者登録不要

• 総発電量の20%以内での余剰電力売電が認められる

電力開発計画の改正8 2025年2月

2025

電源開発計画の修正8 エネルギー開発

• エネルギー部門の5つの成長シナリオを提示

• 2030年までに最大1万MWの電力輸出を目指す

• 500kV、220kV送電網の拡充を強調

決定番号245/QĐ-TTg 2025年2月

2025

2030年までの原子力開発・利用計画、2050年までのビジョン • 原子力の民生利用を推進する長期戦略

• 2030年をターゲットとする導入、応用計画、2050年までのビジョンを提示

出典:Vietnam Government Portal

こうした背景から、政府は再エネ投資への優遇策や制度整備を進めており、PDP8に基づいた長期的目標の明確化が、民間投資を呼び込む基盤となっている。

日系企業にとってのチャンスと課題

日本はベトナム最大のODA供与国であり、アジアゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みでも中心的役割を果たしている。[7] 再エネ分野への参入においても制度面・資金面での支援を受けやすい。[8][9][10].

LNG(液化天然ガス)分野では2030年をめどに16件のプロジェクトが計画されているが、現時点で完成しているのは2件のみ。[11]日本企業にとっては新規参入の余地が大きく、JETRO調査でも在ベトナム日系企業の62%が「今後の成長が期待できる市場」と評価している。[12].

まとめ

一方で、課題も少なくない。電力購入契約(PPA)の複雑さや行政手続きの不透明性、国家送電網の容量不足などが事業リスクとして指摘されており、特に再エネに適した地方では供給制約が投資回収に影響を与えるケースもある。

日本からベトナムへのエネルギー投資は持続可能な成長とエネルギー安全保障の両立を目指す動きとして注目される。再エネ分野を中心とした協力は今後も拡大が見込まれるが、規制の整備やインフラ投資の拡充がその成否を左右する。課題を克服し、両国が手を携えることで、クリーンかつ強靱なエネルギーシステムの構築が現実のものとなるだろう。


[1] GSO(ベトナム統計総局)のデータ「Foreign Direct Investment Licensed in 2023 by Main Investment Partner」(2025年3月)

[2]在大阪ベトナム総領事館のニュース「Japanese Investment in Vietnam」(2021年4月)

[3] 同上

[4] VEA(ベトナムエネルギー協会)のニュース「Vietnam Energy Association: Achievements in 2024 and Strategic Objectives for 2025」(2024年12月)

[5] VGP(ベトナム政府ポータル)のニュース「Prime Minister's Decision No. 500/QD-TTg: Approval of the National Power Development Plan for the 2021–2030 Period, with a Vision to 2050」(2023年5月)

[6] VBFN(ベトナムビジネスフォーラム)のニュース「What Can Be Seen from the Expected Increase in Electricity Consumption in 2025?」(2024年12月)

[7] ベトナム計画投資省(2024年)。新時代における日本・ベトナム共同イニシアティブの中期実施レビュー

[8] 経済産業省(2024年)。アジアゼロエミッションコミュニティのメンバー

[9] ベトナム商工省(2025年)電力開発計画第8次(PDP8)の改正

[10] 日本貿易振興機構(2024年)「2024年海外進出日系企業景況調査」

[11] ロイター(2025年)。ベトナムの太陽光・風力投資は1兆4千億1300億ドル超に上るリスク

[12] フルクラム(2024年)。ベトナムの再生可能エネルギー物語における予想外の展開

 

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B&Company株式会社

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