ベトナム市場で存在感を増す日本の消費財小売チェーン

30 12月 2024

By: B& Company

小売・流通

急成長するベトナム市場と日本の小売業

ベトナムの小売市場は東南アジアの中でも特に魅力的な投資先として注目されている。経済成長が著しいベトナムでは日本製品の輸入額が年々増加し、日本の小売チェーンや製品が多くの消費者に支持されている。

【図1】日本製消費財の輸入額（十億USD）

日本製消費財の輸入額（十億USD）

資料：Statista [1]

日本の小売チェーン進出の歴史

日本の消費財小売チェーンは2011年のMinistopの進出を皮切りにベトナム市場に本格参入した。Circle K（米国発）の成功を背景に日本のコンビニスタイルが急速に浸透[2]。その後、FamilyMart（2013年）や7-Eleven（2017年）が参入し、2024年7月時点で全国に1,374店舗のコンビニが展開されている[3]。

【図2】主要コンビニチェーンの店舗数（2024年時点）

チェーン名	発祥国	ベトナム参入年	店舗数
Circle K	米国	2008	400
GS25	韓国	2018	300
Ministop	日本	2011	178
FamilyMart	日本	2013	160
7-Eleven	日本	2017	66

資料：B&Company

さらに、2014年にはAEONが初のショッピングモールをオープン[4]。高品質な商品や多様なラインナップ、優れたサービスを提供し、全国に11のモールを展開している[5]。中部のフエ省にも進出し、その存在感をさらに拡大している[6]。

消費者ニーズの変化と日本製品の人気

近年、ベトナムの消費者の購買傾向は必需品からブランドやプレミアム商品へと移行している。この変化によりUNIQLO（全国25店舗[7]）や無印良品（全国10店舗[8]）などの日本ブランドが注目を集めている。

また、日本製品専門の小売チェーンも成長を続けている。例えば、Hachi Hachi（ホーチミン市約5店舗[9]）は手頃な価格の商品を提供し、Sakuko（全国40店舗以上[10]）は高級志向の商品で人気を集めている。

日本製品が支持される理由

＜EC市場の進化＞

ベトナムではスマートフォンの普及とともにEC市場が急成長した。Lazada、Tiki、Shopeeなどのプラットフォームが多くの日本製品を取り扱っている。

– オンラインショッピング利用者数（2022年）：約5,100万人[11]
– EC市場の年平均成長率（2022年～2025年）：約25%[12]
– EC市場の市場規模（2025年予測）：約350億USD（小売業売上の約10%）[13]

＜品質志向の高まり＞

ベトナムの消費者の品質、安全性、原産地に対する意識が高まっている。Vietnam High-Quality Goods Business Associationの調査（2023年）では「安全で高品質な製品」が購入決定要因として上位に挙げられている[14]。

＜日本製品への信頼感＞

若年層を中心に高品質で耐久性のある日本製品が支持されている。

– Shopeeでの日本ブランド関連の検索キーワードの割合：約17%[15]
– 好きな原産地：日本が2位[16]
– 日本の自動車、電子機器：若年層の約58%が支持[17]
– 日本のファッション：若年層の約22%が関心[18]

ベトナムにおける日本の小売チェーンの未来

2023年、ベトナムの小売市場の売上は前年比約8.6%増加の約4,859兆VND（約290億USD）に達したとされている[19]。この成長市場において日本ブランドには大きなチャンスがある。

特にAEONはベトナムを日本に次ぐ重要な投資先と位置付け、2023年に売上（前年比4～5%増加）、顧客数（前年比3～4%増加）ともに着実に伸ばしている[20]。2024年4月にはホーチミン市に新たな大型スーパー「AEON Nguyen Van Linh」をオープンし、小売業態の多様化を進めている[21]。