By: B& Company
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ベトナムは世界で最も大量の廃水を排出する国の1つであり、上位30か国にランクインしている[1]。VWSA(ベトナム上下水道協会)によると、毎日約1,200万㎥の廃水が発生しているにもかかわらず、その約87%は未処理のまま環境に放出されているのが現状である[2]。
ベトナムの廃水処理の取り組みは生活廃水と産業廃水に分けられる。
<産業廃水>
産業廃水の分野では進展が見られ、2023年までに工業地帯の約92%が集中廃水処理システムを導入した。これらのシステムには自動モニタリング機能も備えられている。一方、産業クラスターや工芸村では適切な処理システムの導入率がそれぞれ約17%、約16%に留まり、依然として課題が山積している[3]。これらの地域では生産効率が環境配慮に優先されるほか、スペースの制約や農村部のインフラ不足が原因となっている。
<生活廃水>
生活廃水では都市排水システムが需要の約60%しかカバーできておらず、多くの排水ネットワークが集中処理施設に接続されていない[4]。また、雨水と廃水を同時に排出する方式が主流で処理の効率を低下させている。
小規模発生源では濾過場や生物池などの自然方式が主に使用されている。これらは広大な土地を必要とするため、農村部や観光施設に適している一方で都市部での適用には限界がある。
エンジニアリング方式では物理的、化学的、生物学的手法を柔軟に組み合わせることで効率を向上させている。特に注目されるのは日本の「Johkasou(高度浄化槽)」である。この技術は集中処理施設がない地域での利用に適しており、別荘、住宅、ホテルなどで活用されている。2020年末時点でベトナム国内には1,325基の浄水場があり、そのうち半数以上が小規模システムである[5]。また、ベトナム企業も「Johkasou」を参考にした製品の開発を進めており、従来の浄化槽よりも高性能な分散型処理ソリューションの需要が拡大している。
政府は廃水処理分野への民間セクターの参入を奨励するべく、税制優遇やPPP(官民パートナーシップ)プロジェクトなどのインセンティブを提供している。しかし、収益モデルが不明瞭なため、投資が進みにくい状況にある。高い導入コストや価格規制が企業の投資意欲を阻害している。
「Johkasou」技術に関しても、規制基準の欠如や高コストが課題となっており、特に農村部や経済的に困難な地域での普及が遅れている。また、設置後の運用や保守が重要であるにもかかわらず、これを管理するための十分な監視システムが整備されていないことも課題である。
政府は2030年の持続可能な開発目標(SDGs)に向けて廃水管理を国家の重要課題と位置付けている。主要都市では排水改善プロジェクトが進行しており、規制強化や技術投資が推進されている。また、分散型処理システムのような柔軟なソリューションは特に都市部以外の地域での適用に向いている。
<日本企業にとって投資機会のある分野>
さらに、「Johkasou」技術の導入と普及には日越間での技術移転や共同開発が重要である。これにより、既存の課題を解決しつつ、持続可能な廃水処理ソリューションを提供することが可能となる。
ベトナムの廃水処理分野は課題が多い一方で成長の可能性を秘めている。政府の規制強化や民間セクターの参入促進によってインフラ整備や技術革新が進むことが期待される。特に日本企業は長年の技術的信頼性と革新的なソリューションを活かしてベトナムの廃水処理市場で大きな役割を果たす可能性がある。
[1] 出典:Tap Chi Moi Truong(環境保護に関する専門誌)のニュース「Experiences in Wastewater Reuse in Developed Countries and Industrial Wastewater Recycling Technologies in Vietnam」(2023年8月)
[2] 出典:VnEconomy(オンライン経済メディア)のニュース「Chairman of the Water Supply and Drainage Association: Over 10 million cubic meters of untreated wastewater are discharged into the environment daily, causing pollution」(2024年11月)
[3] 出典:MONRE(天然資源環境省・水資源管理局)のWebサイト「National Environmental Status Report (2016-2020)」(2021年)
[4] 出典:MONRE(天然資源環境省・水資源管理局)のWebサイト「National Environmental Status Report (2016-2020)」(2021年)
[5] 出典:JICA(国際協力機構)のレポート「Johkasou System in Vietnam」(2022年1月)
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