VOD市場が伸長するベトナム、日本コンテンツの浸透に余地

スマートテレビを中心としたVOD(ビデオ・オン・デマンド)の隆盛は、日本発コンテンツの可能性と課題をもたらしている。
VOD market in Vietnam

2025年6月19日

B&Company

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2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

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東南アジア有数の「テレビ好き」として知られるベトナムにおいて視聴スタイルが大きく変わり始めている。かつてはテレビの地上波番組が中心だったが、近年はスマートテレビを中心としたVOD(ビデオオンデマンド)が台頭しつつある。コンテンツの供給構造がグローバル化する中、日本発コンテンツの可能性と課題を探る。

急拡大する視聴時間、主役はスマートテレビ

Kantarがハノイ市、ダナン市、ホーチミン市、カントー市の4都市で実施した調査によれば、テレビやVOD、ライブ配信などの動画コンテンツを「前日に視聴した」と回答した人の割合は2020年第1四半期の71%から2021年第2四半期には85%へと急上昇。平均視聴時間も82分から112分へと拡大した。

視聴デバイスにも変化がみられる。スマートテレビが66%と最多で、次いでスマートフォン(61%)、ノートパソコン(53%)と続く。 [1]従来の「リビングで家族とテレビを見る」というスタイルはそのままに視聴機器と番組の中身が「スマートテレビ+オンデマンド型」へとシフトしている実態が浮かび上がる。

GDP比で東南アジア最大、成長余地もなお大きい

【図1】GDP当たりのVOD市場規模(1/100%、2023年)

GDP当たりのVOD市場規模(1/100%、2023年)

(参考:日本15.4、米国25.4、英国24.6)

ベトナムのVOD市場は2023年時点で約3.2億USDに達し、2028年には4.9億USDと約60%の成長が見込まれている。注目すべきは市場の絶対規模ではなくGDP比でのVOD支出が東南アジアで最も高い点である。

地場・外資の混戦、YouTubeが首位を維持

【図2】ベトナムの主要VODプレイヤー

会社名 国籍 ベトナム参入年 売上シェア (2022)
ユーチューブ 米国 2005 37%
FPTプレイ ベトナム 2013 11%
ネットフリックス 米国 2016 11%
VTVGo ベトナム 2015 11%
iQIYI 中国 2020 8%
ポップス ベトナム 2008 6%
その他 16%

(100%=2億7,200万USD)

VOD市場ではグローバル大手とベトナム発の地場企業が競り合う構図となっている。2022年のシェアでは米国のYouTubeが37%と首位を独走。Netflix(11%)や中国のiQIYI(8%)といった海外勢も存在感を示す。

一方、地場のFPT Play(11%)、VTVGo(11%)、POPS(6%)なども上位に食い込み、ベトナム市場特有の混在構造が際立つ。FPTは民間IT企業、VTVGoは国営放送局、POPSはローカルメディア企業とそれぞれ母体も多様だ。旧来のテレビ局にとってはVOD分野への参入が生き残りをかけた戦略転換となっている。

日本発コンテンツはニッチ、アニメが突破口に

では、VOD上でどのようなコンテンツが視聴されているのか。米国や韓国の映画・ドラマが高い人気を誇る一方、日本の映像作品はアニメを除けばニッチな存在にとどまる。現在の視聴層はいわゆる「日本好き」に限られているのが実情だ。もっとも、突破口は存在する。子ども向けアニメは健闘しており、「ドラえもん」は毎年のように映画館の興行成績上位を占め、VODでも定番作品として定着している。近年は一般向けドラマや映画の放映も徐々に増加傾向にあり、今後はジャンル横断的な展開への期待が高まる。

多様化する視聴環境、日本にとっては試金石

ベトナムのVOD市場は拡大の一途をたどり、テレビ視聴文化の根強さとデジタル変革が共存する稀有な市場となっている。今後はコンテンツの翻訳・字幕、レコメンドアルゴリズムの最適化などを通じて、日本コンテンツの認知拡大と定着を図る余地がある。既に韓国はドラマを通じて「文化輸出」の成果を上げており、日本も同様の展開を目指すにはアニメ以外の柱の育成が急務である。ベトナムという親日国での成果がアジア全域への波及の試金石となる可能性を秘めている。


[1] 出典:Market Report IO 「Vietnam Streaming Report and Prediction 2020-2025 : Viet Nam」 (2022年3月)

 

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