競馬産業の胎動、規制は解けてもライセンスの壁厚く

2017年、ベトナム政府がスポーツ賭博の合法化に踏み切ってから7年。競馬産業は一部で動き出したが、賭博を伴う正式な競馬場は今なおゼロという現実がある。各地で開発が進む大型プロジェクトは法制度の整備と行政手続きの複雑さという「見えない障壁」の前で足踏みを強いられている。
Horse racing industry in Vietnam

2025年7月7日

B&Company

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2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。

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2017年、ベトナム政府がスポーツ賭博の合法化に踏み切ってから7年。競馬産業は一部で動き出したが、賭博を伴う正式な競馬場は今なおゼロという現実がある。各地で開発が進む大型プロジェクトは法制度の整備と行政手続きの複雑さという「見えない障壁」の前で足踏みを強いられている。

営業中は2施設のみ、いずれも賭博ライセンス未取得

現在、国内で稼働している競馬施設は2017年に開業した「ダイナム競馬場」(ビンズオン省)と2024年にオープンした「Vinpearl馬術アカデミー」(ハイフォン市)の2施設にとどまる。いずれも本格的な賭博を伴わない、イベント・スポーツとしての運営にとどまっており、賭博事業のライセンスは未取得のままだ。このほか、ハノイ市ソクソン県、ラムドン省、ビンフック省などで進む大規模競馬場の開発計画もライセンスの取得と行政手続きの遅れにより、進捗は緩やかだ。

【図1】主な乗馬関連の大型プロジェクト

競馬場名 賭博免許 賭博免許 面積 (ha) 運営年 投資家 投資額
ヴィンパールホースアカデミー × ハイフォン市 30 2024 ヴィングループ 該当なし
ダイ ナム 競馬場 申請中 ビンズオン省 60 2017 ダイ・ナム 8,000万USD
ソクソン競馬場 申請中 ハノイ市 125 建設中

(2019~)

チャームVIT

(韓国)

4.2億USD
ティエン・マ・マダグイ 申請中 ラムドン省 70 建設中

(2011~)

ティエン・マ・マダグイ・レーシング 6,400万USD
ヴィンフック・コンプレックス​ 申請中 ビンフック省 200 計画段階 ゴマックスI&D

(韓国)

ビンフック省

合法化済みでも「運用の壁」は厚い

ベトナムにおける賭博解禁の基礎は2017年施行の 「政令06/2017/ND-CP」 にある。この政令は競馬・ドッグレース・サッカー賭博を正式に合法化し、観光産業や娯楽産業との連動を図る政策の一環とされた。

実際、Statistaによれば、2024年のベトナム国内における賭博収益は38億USDに達する見込みとされ、国家財政にとっても無視できない成長分野だ。 [1]ハノイ市が進める「ソクソン競馬場」プロジェクトでは年間最大2.5億USDの税収が見込まれるとされる。 [2]さらに、競馬場に隣接してカジノ、リゾート、高級ホテルを含む複合開発が計画されており、単体の施設ではなく、地域開発の核として位置づけられている。

市場の将来性は高いが、外資の参入は依然困難

魅力ある市場とは裏腹に外国投資家が賭博ライセンスを取得した前例はいまだ存在しない。大きな要因はベトナム政府の慎重な姿勢と法的・行政的手続きの複雑さにある。加えて、競馬事業は土地の広大な取得が不可欠であり、そのための土地使用権取得、通関手続き、建設認可などに膨大な時間と調整が必要となる。また、外資企業が単独で土地を取得することは難しく、信頼できる地場パートナーの存在が不可欠だ。

馬術振興も進む、文化的基盤の整備段階へ

競馬に加えて、現在ベトナム国内では16省市で乗馬・調教施設が稼働しており、そのうち最多はハノイ市、馬の頭数が最大なのはラムドン省の「ティエンマーマダグイ競馬場」である。 [3]こうした動きに対応するかたちで馬術連盟設立の準備も進行しており、スポーツ・観光・文化を統合した競馬関連産業の育成が見込まれる。

制度の「次の一手」が市場開放の鍵に

ベトナムは法制度上すでに競馬の賭博事業を合法とし、開放の道を示した。しかし、制度の実効性と行政の透明性が整わなければ、実際のビジネスには結びつかない。これは外国投資家にとって重大なリスクであり、進出判断を慎重にする一因にもなっている。

観光・娯楽・スポーツの融合分野としての競馬産業には大きな潜在成長力がある。だが、その可能性が現実となるには政府による規制緩和と行政支援、そして内外投資家の協働環境の整備が不可欠だ。


[1] 出典:Statista(ドイツのオンラインデータプラットフォーム) 2012年から2024年までのベトナムにおける「ギャンブルおよび賭博活動」の産業収益 」(2023年12月)

[2] 出典:トゥ・オイ・チェ(ホーチミン共産青年連合の新聞) ハノイ市は約5億ドル相当の競馬場建設を提案 」(2024年1月)

[3] 出典:Bao Kinh Te Do T hị(ハノイ市人民委員会新聞) 観光振興のための馬術競技の発展 」(2023年5月)

 

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