
2025年4月1日
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ベトナムの半導体産業が今、急速な成長を遂げている。政府の積極的な支援と豊富な鉱物資源を背景に世界の半導体市場における重要なプレイヤーとしての地位を確立しつつある。現在は発展の初期段階にあるが、外国企業の進出や投資の増加がその成長を後押ししている。
ベトナムの半導体市場の現状
ベトナムの半導体産業は拡大を続け、2025年には約210億USDに達すると予測されている。2024年と比較して18%の成長を見込み、過去5年間で約49%という驚異的な成長を遂げる。さらに、2025年から2029年まで年平均10%の成長を続け、最終的には約310億USDに達する見込みである。[1].
製品タイプ別の半導体売上高(%)
出典: Statista
市場を支えるのは集積回路(IC)で、2024年には半導体市場の約85%を占めるまでに成長。ICは電子機器や自動車、医療機器など幅広い分野で利用されている。一方でオプトエレクトロニクスやディスクリート半導体、センサー&アクチュエーターといった分野の市場規模は小さく、半導体市場全体の約15%にとどまる。
投資面でもベトナムは好調で、2024年の外国直接投資(FDI)は前年比9%増加の約250億USDに達し、過去最高を記録した。[2]これは半導体産業に限らず、ベトナム経済全体が海外からの投資家にとって魅力的な市場であることを示している。
半導体産業を支える主要プレイヤー
ベトナムの半導体産業は大きく「設計・研究」、「製造」、「組立・検査・包装」の3つの段階に分かれる 。このうち最も活発なのが「設計・研究」分野であり、特にハノイ市やホーチミン市を中心に外資企業が進出している。日本、ドイツ、中国、韓国、米国などの企業がこの分野を牽引する中、ベトナム企業としてはFPT Semiconductorがチップの開発に注力している。[3]
「製造」分野では韓国のSamsungやHana Micron、中国のMicro Commercial Componentsなどがベトナムに進出し、プリント基板やIC、半導体部品を生産している。一方で、「組立・検査・包装」分野はAmkorやIntelといった米国企業が主導し、電子部品やチップセットの製造を担っている。
ベトナムの半導体企業(一部抜粋)
会社名 | 原産国 | 主要製品 | 所在地 | |
設計 研究 |
Renesas | 日本 | システムオンチップ(SoC)、マイクロコントローラ、通信関連 | ホーチミン市 |
FPT Semiconductor | ベトナム | 電力管理、スマートデバイス、ヘルスケア向けのチップセット | ハノイ | |
Qualcomm | 米国 | 電子機器、、自動車、家庭用機器、ロボット向けのチップセット | ハノイ ホーチミン |
|
製造 | Samsung Electro-Mechanics | 韓国 | 高密度配線基板、プリント基板、タッチセンサーモジュール | タイグエン省 |
Hana Micron | 韓国 | スマートフォン、その他のスマートデバイス向けの集積回路 | バクニン省 バクザン省 |
|
組立 検査 包装 |
Amkor Technology | 米国 | システムインパッケージ(SiP)向けの半導体 | バクニン省 |
Intel Product Vietnam | 米国 | システムインパッケージ(SiP)向けの半導体 | ホーチミン市 |
資料 : B&Company
投資動向と今後の展望
半導体産業への投資は主に外資企業によって推進されてきたが、2021年末には景気後退の影響で一時的な減速が見られた。[4]Intelは10億USD以上の投資を行った後、新規投資を見送り 、Samsungも9億USDの追加投資後に様子見の姿勢を示していた 。しかし、2024年以降は市場が勢いを取り戻し、大手グローバル企業の投資が再び活発化している。[5].
ベトナムの半導体投資案件(2025~2030年)
会社名 | 原産国 | プロジェクト名 | 完成年 | 投資価値
(百万米ドル) |
所在地 | |
デザイン/研究 | ビクトリージャイアントテクノロジー | 中国 | 工場建設 | 2026 | 206 | バクニン省 |
製造 | ハナマイクロヴィナ | 韓国 | 資本投資 | 2025年末 | 400 | バクザン |
シグネティクス | 韓国 | フリップチップ、MCM、BGA、FBGA生産のための工場建設 | 2025年10月 | 100 | ヴィンフック | |
ベシ | オランダ | 電子部品工場建設 | 2025年3月 | 5 | ホーチミン市 | |
ベトテル | ベトナム | 半導体製造工場 | 2030 | 未知 | 未知 | |
組立 検査 包装 |
Amkor Technology | 米国 | 工場を年間420トンから1,600トンに拡張 | 2025年10月 | 1,000 | バクニン省 |
資料:B&Company
2025年2月には日本とベトナムが半導体産業における協力を強化するための会合を開催。日本はベトナムの若く豊富な労働力に着目し、労働協力や技術移転の可能性を模索している。日本政府は2030年までに自国の半導体産業を3,330億USD規模に成長させる計画を立てており、その過程でベトナムとの連携を強化する可能性が高い。[6][7].
政府の取り組みと投資家への影響
ベトナム政府は半導体産業を国の戦略的な柱の1つとして位置付け、様々な支援策を打ち出している。特に国内の人材育成を強化するため、2025年度からハノイ国家教育大学(HNUE)やハノイ工科大学(HUST)、ハノイ国家大学・科学大学(VNU-HUS)が半導体技術の新プログラムを導入する予定である。
また、ベトナムには2,200万トンのレアアース鉱物が埋蔵されており、これは世界の供給量の18%以上に相当する 。これは半導体材料の供給面で大きな強みとなるが、課題もある 。投資家にとっての障壁の1つは複雑な行政手続きであり、事業開始までに時間がかかることが指摘されている。また、物流コストも依然として高く、ベトナムはGDPの約16%を物流に費やしており、日本(約11%)、シンガポール(約8%)、マレーシア(約13%)と比較しても割高である 。
ベトナムの 半導体産業促進政策
法規定 | 発行日 | 法規定 | 半導体産業の促進に関する内容 |
38/2020/QĐ-TTg | 2020
年発効 2021 |
ハイテク技術、製品の優先投資承認リスト | 半導体産業、関連製品が優先投資対象に指定 |
182/2024/NĐ-CP | 2024 | 半導体、AI企業向け投資支援基金 | 半導体、AI企業向けに以下の補助を実施:[8].
· 人材育成 : 研修費用の最大50% · 研究開発 : R&D費用の最大30% · 固定資産投資 : 設備、インフラ費用の最大10% · ハイテク製品製造 : 生産コストの最大3% · 社会インフラ : 施設建設費の最大25%[9] |
1018/QĐ-TTg | 2024 | 半導体産業の発展ロードマップ | ベトナムは2050年までに以下を達成する予定です。
· 100,000 人以上のエンジニア、少なくとも 300 社の設計/研究企業。最低 3 社の製造工場と 30 社の組み立て工場。 · ベトナムの半導体市場の収益は年間1000億米ドルに達する |
出典:Vietnam Government Portal
まとめ
ベトナムの半導体産業は政府の支援と外資の積極的な投資を受けて急速に成長している。特に「設計・研究」分野では外資企業の進出が進み、内資企業も徐々に存在感を増している。[10][11].
一方で、「製造」や「組立・検査」の分野はまだ外資に依存しているが、日本との協力強化をはじめとする新たな動きが今後の発展をさらに加速させるだろう。今後も投資環境の改善と人材育成の強化が進めばベトナムは半導体産業において重要なグローバルハブへと成長する可能性を秘めている。[12][13]
[1] Statista (2024) ベトナムの半導体産業の収益アクセス>
[2] ベトナムプラス (2025)。ベトナム、2024年に記録的なFDI支出を達成アクセス>
[3] ベトナム裾野産業ポータル(2024年)。半導体産業の概要アクセス>
[4] VnExpress(2023年)。インテルはベトナムへの投資を約束していないアクセス>
[5] 政府ニュース(2022年)。サムスンが投資額を9億2000万ドル増額アクセス>
[6] 計画投資省(2025年)。ベトナム・日本半導体協力会議アクセス>
[7] ベトナムの声(2025年)。半導体産業におけるベトナムと日本の協力の可能性アクセス>
[8] 支援資金のレベルは各企業の支出に応じて異なり、より高いレベルの資金を受け取るにはより厳しい条件が求められる。
[9] 社会インフラには、労働者が借りる社会住宅、学校、保育所、医療施設、文化施設、スポーツ施設などが含まれます。
[10] 米国地質調査所(2025年)。希土類元素の統計と情報アクセス>
[11] VnExpress(2025年)。さまざまな大学が半導体研修プログラムを提供開始アクセス>
[12] ティナンチュンコアン(2024年)。ベトナムの投資手続きは時間がかかりすぎるアクセス>
[13] 政府ニュース(2024年)。ベトナムの物流コストを削減し、競争優位性を高めるアクセス>
B&Company株式会社
2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。また最近では90万社を超える在ベトナム企業のデータベースを整備し、企業のパートナー探索や市場分析に活用しています。 お気軽にお問い合わせください info@b-company.jp + (84) 28 3910 3913 |