
2025年2月28日
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近年、ベトナムの自動車市場は大きな変化を遂げている。特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の普及が加速しており、その背景には環境意識の高まりや政府の政策支援が大きく影響している。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環としてEVへの税制優遇や補助金が強化されているのも、この流れを後押ししている。[2]EVに対する税制優遇措置やコスト削減も実施される。
自動車市場の2024年の動向
2024年の自動車市場は前年比7%増加の28.6万台を超える販売台数を記録した[1]。特に乗用車の需要が高く22万台が売れ(図1)、その中でもSUVが最も人気で全体の38%を占めた[3].
【図1】タイプ別・自動車販売台数(千台)
単位:千台
資料:Cinematone[9] ベトナム自動車工業会(VAMA)[4]
メーカー別に見ると、Toyotaが約6.7万台を販売し、シェア20%でトップに立った。続くFordとMitsubishiも12%のシェアを獲得し、日本ブランドの強さが際立っている 。[5]耐久性やコストパフォーマンスの良さがベトナムの消費者に支持されている
【図2】ブランド別・自動車販売台数(%:2024年)
資料:Cinematone[9] ベトナム自動車工業会 (VAMA)
EV市場の急成長
ベトナムのEV市場は急速に拡大している。2025年には市場規模が30億USDに達し、2030年には70億USDまで成長すると予測されている[5]。その成長を象徴するのが国内EVメーカーのVinfastである。[6].[7].[8].
2024年、Vinfastは前年比150%増加となる87,000台を販売し、国内最大の自動車ブランドとなった[9]VF5」と「VF3」モデルが特に人気で、それぞれ3.2万台、2.5万台を売り上げた. この成功の背景にはEVタクシー事業者のXanh SMとの提携があり、VinfastのEVがタクシー市場で積極的に活用されていることも要因である。[10].
また、Vinfastは2025年に新たなEV工場を稼働させ、年間30万台の生産能力を目指している.[11]トヨタはベトナムのハイブリッド車セグメントで主導的な地位を確立し、2024年上半期に1,682台のハイブリッド車を納入し、この期間にハイブリッド市場シェアの48.8%を獲得した。[12]加えて、日本や韓国のメーカーも次々とベトナム市場に参入しており、今後益々競争が激しくなりそうである。[13].
ハイブリッド車の台頭
EVの成長とともにハイブリッド車の人気も急上昇している。2024年のハイブリッド車の販売台数は1万台を突破し、前年から200%以上の増加を記録した[10]。特にToyotaは「Corolla Cross Hybrid」や「Innova Cross Hybrid」といったモデルを展開し、市場の約半分を占める圧倒的な存在感を示している[11]。
【図3】最も売れているEV車、ハイブリッド車(2024年)
資料: B&Company
EV・ハイブリッド車人気の理由
KPMGの調査(2024年8月)によると、ベトナムの消費者の85%以上が環境問題や健康への影響を懸念しており、これがEV・ハイブリッド車の購入を後押ししているようだ[12]。特に25~44歳の層では新技術への関心が高く、グリーン車への移行を積極的に進めている[13]。[15].
政府もこの流れを支援し、EVの充電インフラ整備や税制優遇策を進めている。「交通分野におけるグリーンエネルギー転換と炭素排出削減に関する決定」(876/QD-TTg)では2050年までに国内の交通機関を100%電動化する目標が掲げられ、Vinfastのような国内メーカーへの支援も強化されている。
また、EVは政府の支援を受けている一方でハイブリッド車には同様の優遇措置がなく、価格が高いことが普及の障壁となっている。ノルウェーのように充電インフラ整備や内燃機関車の規制強化を進めることで、よりスムーズな移行が実現できるかもしれない。
ベトナムの自動車市場はEVとハイブリッド車を軸に変革を遂げている。今後も技術革新や政策の動向に注目しながら、持続可能なモビリティの発展が期待される。
EV | |
特別消費税 | – 01/03/2022 – 28/02/2027: 1 – 3%
– 2027年1月3日から: 4 – 11% |
登録料[17] | – 01/03/2022 – 28/02/2025: 0%
– 01/03/2025 – 28/02/2027: 5 – 8% |
出典: トゥ・ヴィエン・パップ・ルアット
課題と今後の展望
EVやハイブリッド車の普及にはいくつかの課題もある。特に充電インフラの不足が大きな問題であり、都市部では改善が進んでいるものの、農村部ではまだ十分とは言えない[18]現在、Vinfastが全国63省市に約15万の充電ポータルを展開しているが、EV One、Charge+、EverChargeなどの他のメーカーはまだ限定的な展開に留まっている[19].
また、EVは政府の支援を受けている一方でハイブリッド車には同様の優遇措置がなく、価格が高いことが普及の障壁となっている。ノルウェーのように充電インフラ整備や内燃機関車の規制強化を進めることで、よりスムーズな移行が実現できるかもしれない。[20] ベトナムの自動車市場はEVとハイブリッド車を軸に変革を遂げている。今後も技術革新や政策の動向に注目しながら、持続可能なモビリティの発展が期待される。
[1] 出典:VAMA(ベトナム自動車工業会)のレポート「VAMA Sales Report – December 2024」(2024年12月)
[2] 出典:同上
[3] 出典:同上
[4] 出典:同上
[5] 出典:Mordor Intelligence(インドの市場調査会社)のニュース「Vietnam Electric Vehicle Market Size & Share Analysis – Growth Trends and Forecasts (2025 – 2030)」(N/A)
[6] 出典:The Investor(オンラインニュースプラットフォーム)のニュース「Vinfast Sets New Monthly EV Delivery Record in Vietnam」(2025年1月)
[7] 出典:The Investor(オンラインニュースプラットフォーム)のニュース「Vietnam’s Auto Sales up 12.6% in 2024 to 340,142, Vinfast Biggest Seller」(2025年1月)
[8] 出典:Lao Dong Newspaper(ベトナム労働総連盟の機関紙)のニュース「Vinfast Starts Electric Car Manufacturing Plant in Ha Tinh」(2024年12月)
[9] 出典:Reuters(英国のニュース通信社)のニュース「BYD Sets Sights on Aggressive Expansion in Vietnam」(2024年7月)
[10] 出典:Vietnam Economic Times(ベトナム経済協会の電子雑誌)のニュース「Top Hybrid Cars Sold in the Vietnamese Market in 2024」(2025年1月)
[11] 出典:CafeF(オンラインニュースプラットフォーム)のニュース「How Did Hybrid Car Business Perform In Vietnam In The First Half Of The Year?」(2024年7月)
[12] 出典:KPMG Vietnam(オランダのアドバイザリーサービス会社)のレポート「Driven by Voltage: Navigating the EV Landscape」(2024年7月)
[13] 出典:同上
[14] 出典:CafeF(オンラインニュースプラットフォーム)のニュース「How Many Electric Vehicle Charging Stations Are There in Vietnam?」(2024年9月)
株式会社ビーアンドカンパニー
2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。また最近では90万社を超える在ベトナム企業のデータベースを整備し、企業のパートナー探索や市場分析に活用しています。 お気軽にお問い合わせください info@b-company.jp + (84) 28 3910 3913 |
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