事例紹介「南部でのめっき業進出」

B&Companyは、ハノイ・ホーチミン市周辺の省・市を進出候補地として約300社の日系金属加工企業をリストアップ。問合せに対して回答を得られた約200社からめっき外注ニーズのある事業者約50社を抽出し分析した。

2024年9月12日

B&Company

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【会社概要】

会社名: 京王電化工業株式会社(東京都)

創立: 1968年

主要事業: 表面処理(金属めっき全般)。電子部品や自動車部品のめっき加工が専門

従業員数: グループ総数約150名

2014年にベトナムに進出(ビンズオン省)

ポイント

  • 国内事業の限界を感じ2014年にベトナム南部ビンズオン省にめっき工場を建設した
  • 進出前にB&Companyに調査を依頼。顧客業界への踏査結果をふまえ、他国とも比較・検討した上でベトナム進出を決断。地域としては、諸条件を勘案して南部を選択した
  • 10年間で国内事業も成長したもののベトナム事業の伸びが大きく、グループ内における売上は3割にもなっている。グループ売上は2倍に成長
  • -数字にはあらわれない新たな事業の創出や人材への効果も大きいと考えている
  • 日本のめっき業界とベトナム進出の経緯

    京王電化工業は、材料の表面に金属膜をつけて機能性を高める「機能めっき」を手掛ける企業である。

    めっき業界は環境や新素材への対応など技術開発が必要で、大きく変化している。

    姫野代表

    「例えば医療機器軽量化の為に開発されているマグネシウムを使った新素材などはめっき方法が確立されておらず都度工夫する必要があります。10年前に比べると、日本国内のめっき専門業者は4~500減って1,200社ぐらいになっています」

    同社は、当時、長引く国内景気の低迷、不安定な為替レート等の不安材料がある中、余力のあるうちに海外にも収益拠点を設ける方針を固めた。

    姫野代表

    「業績は伸びてはいたものの、将来、日本国内でものづくりをしていくというのが厳しくなる可能性を感じていました。それ以外に、 会社の成長を考えた時に、海外工場を持って、めっき技術を通じて「世界をまたにかけた仕事」をすることで社内を活性化したいという想いもありました」

    まず自社での検討体制を立ち上げ、次いで中小企業基盤機構の専門家に依頼し検討を開始した。専門家と同行した出張においてB&Companyを訪問し調査を依頼することとなった。ベトナム以外にもインドネシアも考えていた。

    B&Company調査レポートイメージ

    姫野代表

    「長年ベトナムで事業をやられていたB&Companyに調査をお願いしました。その当時、私共は海外に出たいということは明確だったのですが、 インドネシアのジャカルタか、ベトナムのハノイかホーチミンか、どこに出るかを迷っていました。我々日本のめっき企業が海外に進出して仕事ができるか、B&Companyの調査結果ももとにしてベトナム南部へ進出する決断をしました」

    B&Companyは、ハノイ・ホーチミン市周辺の省・市を進出候補地として約300社の日系金属加工企業をリストアップ。問合せに対して回答を得られた約200社からめっき外注ニーズのある事業者約50社を抽出し分析した。めっきと言っても種類は様々でベトナムでは難しいものもあった。地域ごとにも需要供給のバランスは違った。

    姫野代表

    「調査レポートで北と南の比較をしました。結果、南部の工業団地からの熱意あるお誘いもあり、同業他社数の少ない南部がいいかなと。又、めっきを欲してしている会社さんがどの程度あるのかというところを参考にさせていただきました」

    南北の市場規模についても推定比較したが、地域によって1社の平均発注量が違うこともわかった。

    姫野代表

    「進出で期待できる売上についても自社情報と併せて検討しました。 進出を決定する一つの材料として良かったと思います」

    その他の検討結果もあわせ、最終的にホーチミン市近隣の省であるビンズン省への進出を決断した。

    ・ベトナム進出後の状況

    国内において京王電化工業は拡大を続けており、10年前当時は50名ほどだった従業員数は現在100名ほどとなった。

    姫野代表

    「残っているところに対して売上が集中する傾向です。弊社の場合、当時に比べると人員も売上も2倍ほどになりました」

    ベトナム法人の売上も順調に伸びており、グループ全体の総売上で30%ほどを占める。ベトナム法人の顧客はほとんどがベトナム進出してから開拓した新規顧客である。ベトナム工場の技術も向上し、日本で対応している30種類ほどのめっきのうち10種類ほどをベトナム工場でも対応できるようになっている。

    2023年には新工場棟も増設している。

    ベトナム法人(KEIDEN VIETNAM CO.,LTD.)の規模

    姫野代表

    「私どものベトナムのお客さんの9割方がベトナムで初めてお付き合いが始まった会社さんです。 ベトナム工場の技術レベルも上がってきていて、最近はめっきがボトルネックでベトナムでものが作れないというふうなことはだいぶ減りました。上場企業との直接取引は日本国内では多くはないのですが、ベトナムでは結構あり、距離が近い感じがしますね」

    ベトナムでも環境保全についての規制が厳しくなる一方、産業が高度化するにつれ新素材に対する需要も高まりつつある

    姫野代表

    「ベトナムの場合、まだ研究開発部門がないので、日本で確立した技術をベトナムに輸入しているのですが、ベトナムには軽量化のために新素材の活用を検討している企業があります。ベトナムには、これに対応できる技術を持っている企業はまだ少ないです。そこで、そういった企業と相談しながら、日本で試作し、ベトナムの工場で量産するという流れが始まっています」

    現在、中国から移管される新規プロジェクトの数が急増しています。

    姫野代表

    「発展途上国の多くは成長スピードは速いのですが一極集中で首都だけまずどんどん大きくなっていく。ベトナムの場合は、ハノイとホーチミン市と分かれていて、色々な地域があるのでどこかしらに参入機会が残っていて、我々みたいに後発でも間に合ったかなと」

    ・今後の展望

    姫野代表

    「まずベトナムを日本と同じぐらいの売り上げまで持っていきたいです。その為にめっきの種類は増やしていきます。又、ベトナム工場の強みは自社でちょっとした完成品の組み立てもできること。これをしっかりやって供給能力を高めていけば大丈夫だと思っています」

    「ベトナムに進出して良かったなというふうに思います。ベトナムでの出会いが日本国内にもいい影響を与えていると思います。 社内活性化もふくめ10年経ってみてよかったなというふうに思います。ベトナムでナンバーワンのめっき企業になることを頑張っていきますので、 これからもご協力いただければと思います」

    (以上:同社への取材、許諾を得て掲載)

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