By: B& Company
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ベトナムの裾野産業は国の工業化や近代化を推進するエンジンであり、経済発展を支える重要な役割を果たしている。加工・製造分野を基盤とし、最終製品の生産に必要な原材料や部品を供給するこの産業は国の経済構造を強化する要となっている。
国内には約3万社の裾野産業関連企業が存在し、総収益は1.7兆VNDを超え、120万人以上の雇用を生み出している[1]。また、特に機械加工業は切削や鋳造、鍛造、スタンピング、溶接といった多様な技術を活用し、国内約1.2万社が総収益約198兆VND(2017年から2021年のCAGR15%)を上げるなど、経済成長の中心的な役割を担っている。
【図1】加工方法別企業数(社)
資料:B&Company
現在、ベトナムには約5,000社の企業が自動車や機械産業向けに部品を供給しており、約70%が国内メーカー、8%が輸出業者(主に韓国、日本、中国、米国向け)、17%が国内外の両方に供給している[2]。これらの企業の約30%がグローバル・サプライチェーンに統合されており、世界市場と連携するための重要な基盤を築いている[3]。
<戦略的な地理的優位性>
ベトナムは東南アジアの中心に位置し、日本、中国、韓国などの主要市場へのアクセスが優れている。この地理的優位性が物流ネットワークの効率化と輸送コストの削減を実現し、Apple(米国)、Google(米国)、LG(韓国)、Samsung(韓国)、Cannon、Panasonicなどの多国籍大企業を引き寄せている。これらの企業の進出に伴いFoxconn(台湾)、Pegatron(台湾)、Wistron(台湾)、Jabil(米国)といったTier1サプライヤーも進出し、産業基盤がさらに強化されている。
<政府の積極的な支援>
税制優遇や融資支援、専門トレーニングの提供など、多面的な政策で裾野産業の発展を後押ししている。また、多くのFTA(自由貿易協定)の締結によって輸出活動が促進され、国際市場との結び付きが強化されている。
<外資投資の流入>
外国企業による直接投資は裾野産業の成長に不可欠な要素となっている。特に日本企業はベトナムの裾野産業に積極的に投資を行い、重要な経済パートナーとなっている。
一方で、裾野産業の成長には課題も多く存在する。
<中小企業の割合が高い>
裾野産業に携わる企業の88%が中小企業であり、資金や人材が限られているため、成長に苦戦している[4]。さらに、業界をリードする大手企業が不足しており、研究開発や製品イノベーションへの投資が不十分なことが成長を制約している。
<国際市場への参入の難しさ>
多くの国際企業は既存の自国サプライヤーを優先する傾向が強く、ベトナム企業が競争に参加するのは容易ではない。このため、地場企業はしばしば不利な立場に置かれ、グローバルブランドとの連携や有利な条件の確保が難しい状況である。
<グローバル・バリューチェーンへの統合の課題>
約30%のベトナム企業がグローバル・サプライチェーンに統合されているが、多くの企業はそのメリットを十分に享受できていない。高品質な製品を競争力のある価格で提供する能力が課題となっており、さらなる改善が求められている。
ベトナムに投資している143か国と地域の中で日本は第3位の投資国であり、5,300件以上のプロジェクトを通じて740億USD以上を投じている[5]。そのうち70%以上が工業分野に集中し、裾野産業の発展に大きく寄与している[6]。
一方、JETROの調査では、在ベトナム日本企業の現地化率は10年前の28%から2022年には37%に上昇したがサプライヤーの質に課題が残っている[7]。このため、信頼性が高く競争力のある価格で提供できるサプライヤーの確保が引き続き重要なテーマとなっている。
ベトナム政府は税制優遇や無担保保証などの支援策を通じて地場企業がグローバル・サプライチェーンに参加しやすい環境を整えている。また、鍛造やメッキといった重要な工程を担う企業へのインセンティブを強化し、産業全体の競争力向上を目指している。
一方、多くのベトナム企業は日本の厳しい基準を満たすために設備や技術への投資を積極的に行っている。これにより、日本企業とのパートナーシップを強化し、業界のさらなる成長が期待されている。
ベトナムの裾野産業は地理的優位性や政府支援、多国籍企業の投資を背景に今後も成長を続ける見込みである。ただし、課題の克服には地場企業の努力と政府の支援が欠かせない。日本企業との協力は裾野産業の発展における重要なカギとなり、互いの経済成長を支える柱となるだろう。
[1] 出典:Supporting Industry Portal(支援産業ポータルサイト)のレポート「Overview of Vietnam’s Mechanical Market in 2022」(2022年12月)
[2] 出典:MOIT(ベトナム商工省)のニュース「Supporting Industry Enterprises Need Closer Access to Global Value Chains」(2023年11月)
[3] 出典:MOIT(ベトナム商工省)のニュース「Supporting Industry Enterprises Need Closer Access to Global Value Chains」(2023年11月)
[4] 出典:CSID(ホーチミン市支援産業開発センター)のニュース「Where Does Vietnam’s Supporting Industry Stand?」(2023年10月)
[5] 出典:Vnbusiness(オンラインニュースポータルサイト)のニュース「Japanese Enterprises Evaluate Vietnam as a Safe Investment Destination」(2024年2月)
[6] 出典:Vnbusiness(オンラインニュースポータルサイト)のニュース「Japanese Enterprises Evaluate Vietnam as a Safe Investment Destination」(2024年2月)
[7] 出典:CafeF(経済オンラインプラットフォーム)のニュース「Deepening and Expanding the Supporting Industry to Attract Japanese Enterprises」(2023年9月)
B&Company株式会社
2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。また最近では90万社を超える在ベトナム企業のデータベースを整備し、企業のパートナー探索や市場分析に活用しています。 お気軽にお問い合わせください info@b-company.jp +(84) 28 3910 3913 |