ベトナムで進む家電量販店の減少～ECの急成長が背景に～

17 1月 2025

By: B&Company

近年、ベトナムでは家電量販店の実店舗数が顕著に減少している。この動きは2010年代半ばまで市場が急速に拡大していた時期とは対照的である[1]。こうした変化の主要因となっているのが「ECの台頭」とそれに伴う「消費者行動のデジタル化」である。利便性と競争力のある価格を提供するオンラインショッピングが急速に普及し、従来型の実店舗への需要が減少している。

市場動向：収益減と店舗閉鎖が相次ぐ

2023年、家電小売業界は大幅な収益減少に直面した。Dien May Xanh、Media Mart、Nguyen Kimといった大手チェーンはかつて市場を支配していたものの、現在では売上が大きく減少。例えば、Dien May Xanhは2022年比約25%の減収を報告している[2]。

【図1】家電量販店大手3社の売上高の合計（十億USD）[3]

資料：B&Company

【図2】家電量販店大手3社の閉店店舗数（店舗）

資料：B&Company

加えて、これらの企業は継続的な赤字により多くの店舗を閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれている。一時は成長を象徴していた店舗網の拡大も現在では縮小を余儀なくされている。

消費者行動の変化：オンラインショッピングの台頭

家電量販店衰退の背景にはオンラインショッピング人気の高まりがある。2022年には人口の半数以上（約5,700万人）がオンラインで商品を購入している[4]。利便性が高く、豊富な商品から簡単に選べる点や手軽に購入できる仕組みが多くの消費者に支持されている。

さらに、大都市圏（ハノイ、ホーチミン、ダナン）以外では家電量販店の数が少ないため、地方の消費者もオンラインショッピングを利用する傾向が強まっている。加えて、Shopee、Lazada、Tikiといったプラットフォームが頻繁に行う10～50%の割引セールやフラッシュセールも多くの消費者を惹きつけている[5]。

【図3】ECプラットフォームの割引商品の例

資料：Shopee、Lazada

消費者はオンラインで商品のレビューや評価を確認したり、他の購入者の体験談を参考にしたりできる。こうした情報が簡単に得られるため、実店舗よりも透明性が高く感じられることが多い。その結果、購入に対する安心感が生まれ、オンラインで電子機器を購入する人が増えている。

ECとソーシャルメディアの急成長

ベトナムのEC市場は急速に成長しており、Shopee、Lazada、Tiki、Sendoといったプラットフォームに加えて、TikTok、Facebookなどのソーシャルメディアも主要な販売チャネルとして存在感を高めている。2023年には家電製品の売上高が約4,100万USDに達し、EC市場の中でも特に重要なカテゴリーとなっている[6]。

特に注目されているのがインフルエンサー（KOL）を活用したライブストリーミング販売である。KOLが主催するセッションでは視聴者との直接的なやり取りや特別割引の提供が行われ、消費者の関心を集めている。例えば、Dien May Xanhは2023年に1時間のライブ配信で約17,000回の視聴を記録し、367件の注文を獲得。これにより約47億VND（約2.5億円）の売上を達成[7]。この新しい販売手法は2026年までに小売業全体の収益を約20%押し上げると期待されている[8]。