ベトナムのラストワンマイル配送における電動二輪車への移行

08 8月 2024
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By: B&Company

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ベトナムの運輸業

ベトナム天然資源環境省(MONRE)によると、温室効果ガス総排出量の約18%を運輸業が占めている。そのうち二輪車の寄与率は一酸化炭素(CO)と揮発性有機化合物(VOC)の90%以上、浮遊粒子状物質(SPM)の60%である[1]。生産性を妨げることなく気候変動目標を達成するには貨物と旅客の両方の輸送手段で電動二輪車の採用を増やすことが望ましいと考えられている。

パリ協定のもと2030年までに

ベトナムはパリ協定のもと2030年までに温室効果ガス排出量を8~25%削減、2021年の国連気候変動会議(COP26)では2050年までにネットゼロを達成することを約束している。賛否両論があったものの2大都市(ホーチミン市、ハノイ市)は「2030年までの内燃機関二輪車の全廃計画」に関する調査(2022年)を実施した[2]

ベトナムの二輪車市場

ベトナムは世界4位の二輪車市場である。2020年時点で人口約9,760万人に対して約5,800万台の自動二輪車が存在する。そのうち電動二輪車は約590万台(約10%)とアジアの中では中国に次ぐ[3]。しかし、ステータスシンボルとしての自動車の人気の高まり、大気汚染や交通渋滞の緩和を目的とした政府の政策などにより二輪車の年間販売台数は2019年以降減少している[4]

このような傾向にもかかわらず、ガソリン二輪車数は多く電動二輪車に大きな機会をもたらしている。

自動二輪車の新車販売台数(百万台)

自動二輪車の新車販売台数

出典:VAMA(ベトナム自動車協会)

ベトナムの速達サービス市場

ベトナムの速達サービス市場は2021年に約7.1億USDとなり、EC(電子商取引)の急速な拡大により2030年には約48.8億USDに達する見込み。また、オンラインショッピングや即日配達の需要増加により小包を迅速かつ低価格で消費者に届けられる二輪車が求められている[5]。ただし、そのコストは輸送コスト全体の50%以上、サプライチェーンコスト全体の40%以上を占めることもある[6]。EC事業者は燃料価格が高騰するインフレ環境で利益を維持するべく電気自動車(EV)への移行などのコスト削減戦略を模索している。

ガソリン車を電動二輪車に置き換え始めた企業もある。GHN(大手物流会社)は配送にEVを採用している。Ahamove(配送サービス会社)は運用コストと環境負荷の削減のために電動二輪車を自社車両に組み込んでいる[7]Vietnam Post(郵便サービス会社)は配達効率と持続可能性を高めるべく電動二輪車の活用を模索しており、都市部の配達における電動スクーターの性能テストを実施している。このような取り組みはより環境に優しい輸送手段を求める政府の動きと一致している[8]Viettel Post(大手物流会社)も電動二輪車に移行し始め、配送速度向上と排ガス削減のために車両をアップグレード。さらに、配送ルートを最適化してEVフリートの効率を高める技術の活用に注力している[9]Vinfast(大手EVメーカー)は信頼性が高く効率的なEVの提供のために様々な物流会社と提携して電動二輪車の利用を促進している。

電動二輪車の課題と機会

電動二輪車の拡大には課題と機会の両側面がある。

– インフラ整備:適切な充電とバッテリー交換のためのインフラ整備には多くの投資と協力が求められる。

– 政府支援:電動四輪車には多くの優遇措置があるが、電動二輪車に特化したものは少ない[10]

– 環境的・経済的メリット:EVへの移行は運用コストと環境負荷の削減に繋がる。

ベトナムの物流会社による電動二輪車への移行が勢いを増している。インフラへの継続的な投資と政府支援により物流分野は今後数年でより持続可能で効率的なものとなる準備が整っているといえる。

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この記事はASEAN経済通信「よむベトナムトレンド」に掲載されました。

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[1] 出典:MONRE(天然資源環境省)「廃棄物管理に関する国家環境報告書」(2018年)

[2] 出典:Phap Luat(法律新聞)「ハノイ市・ホーチミン市における自動二輪車規制ロードマップ」(2022年4月)

[3] 出典:Kline + Company(米国の市場調査会社)「電動二輪車市場が急成長を遂げる理由」(2022年7月)

[4] 出典:Statista(ドイツのオンラインデータプラットフォーム)「ベトナムにおける自動二輪車販売台数(2018~2023年)」(2024年3月)

[5] 出典:Allied Market Research(インドの市場調査会社)「速達サービス市場に関する機会分析(2022~2030年)」(2022年4月)

[6] 出典:DispatchTrack(米国のソフトウェア会社)「ラストマイル配送コストの内訳」(2021年6月)

[7] 出典:Ahamove(配送サービス会社)「電気自動車による配達~将来のグリーントレンド~」(2022年10月)

[8] 出典:VNNIC(ドメイン管理団体)「交通サービスに電気自動車を導入し、交通事業者間で新たな競争が発生している」(2023年5月)

[9] 出典:Viettel(大手移動体通信事業者)「VTPost Hueが電動バイクを使用した配達をテスト」(2023年3月)

[10] 出典:Daklak24h(ダクラク省の機関紙)「電動バイクをサポートする政策の欠如」(2024年4月)

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