2025年7月10日
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ベトナム観光市場において韓国人旅行者の存在感がかつてなく高まっている。手頃な距離、文化的な共通性、ビザ制度の緩和といった追い風を背景に韓国は2024年の観光立国ベトナムを牽引する筆頭国となった。
外国人観光の27%が韓国人、南部ビーチが人気集める
ベトナム観光総局(VNAT)によると、2024年1~9月の外国人観光客数は約1,300万人に達したが。[1]そのうち韓国からの旅行者は約350万人と全体の約27%を占めた。国別では中国、台湾、米国、日本などを抑え、最多を記録している。[2]
【図1】ベトナムへの観光客数(2024年第1~第3四半期)
(100%=1,270万人)
出典:MOCST(文化スポーツ観光省)
【図2】ベトナムへの韓国人観光客数(百万人)
出典:MOCST(文化スポーツ観光省)
訪問先は気候が温暖でアトラクションの多い南部、南中部に集中しており、フーコック、ダナン、ニャチャンが代表的な目的地だ。寒さを避けて渡航する「冬の避寒地」としての需要が定着しつつある。
観光促進の追い風、ビザ免除と航空路線の拡充
政府の支援も後押しとなっている。ベトナム政府は2023年10月にビザ免除国を拡大し、韓国人観光客は入国から45日間まで滞在可能となった。従来、長期滞在を妨げていた制度的な障壁が取り除かれたことで、リピーターや長期滞在者の増加にもつながっている。
また、ベトナム・韓国間の航空路線も拡充が進む。ハノイ市、ホーチミン市とソウル、釜山、テグを結ぶ直行便は20以上あり。 [3]近年はカムランやニャチャンといった沿岸都市との接続も増えている。地理的利便性が選ばれる理由の1つとなっている。
「親近感」と「価格競争力」が選ばれる理由に
加えて、ベトナムは韓国人旅行者にとって「文化的に親和性のある国」としても評価が高い。料理、礼儀、価値観に共通点が多く、異国情緒と居心地のよさが共存する点が魅力となっている。
【図3】アジア主要観光地における1日あたりの旅行費用比較
ベトナム、ホイアン | インドネシア、バリ | マレーシア、ペナン | インド・デリー | インド・デリー | |
フィルターコーヒー1杯 | 1.3 | 1.8 | 2.3 | 2.1 | 2.2 |
地元産ビール1本(瓶/缶) | 1.2 | 2.4 | 3.4 | 2.1 | 3.4 |
コカコーラ/ペプシ(ボトル/缶)1本 | 0.7 | 1.3 | 1.7 | 1.0 | 2.1 |
ワイン1杯 | 3.6 | 4.2 | 4.5 | 6.0 | 5.9 |
ミネラルウォーター1.5L | 0.4 | 0.5 | 0.3 | 0.5 | 0.3 |
日焼け止め | 3.7 | 12.1 | 8.5 | 9.3 | 4.7 |
虫よけスプレー/クリーム | 1.1 | 0.8 | 3.3 | 1.5 | 1.1 |
ミネラルウォーター1.5L | 39.2 | 40.2 | 50.7 | 55.3 | 58.2 |
合計(ポンド) | 51.2 | 63.3 | 74.6 | 77.8 | 77.8 |
出典:Post Office UK
価格競争力も大きい。Post Office UK(英 はホイアンが「世界で最も物価が安い旅行 位に選出されており、宿泊、食事、観光な 日平均出費は約51ポンド(約9,600円) ア・欧州諸国に比べて大きな差がある 。 [4].
韓国語対応進む、ホスピタリティも選ばれる理由
現地の観光産業も韓国人観光客の受け入れ体制を強化している。ホテルやレストランでは韓国語対応が進み、ツアーやパンフレットも韓国語化されている。言語の壁を越えたコミュニケーションが旅行体験を快適にし、文化的な距離感の近さが「リピーター化」を促している。
【図4】韓国人観光客数の推移(百万人)
出典:MOCST(文化スポーツ観光省)
2023年には韓国大手検索サイト「NAVER」での「ベトナム」検索数が前年同期比260%増加と急増 。ベトナムは韓国人が「次に行きたい国」のトップ3に入る定番となっている。 [5]韓国人が次に訪れたい国トップ3にベトナムが常連となった。
冬のハイシーズンに向けた戦略的対応を
旅行代理店や観光施設にとってこの動きは大きなビジネスチャンスでもある。例年、韓国人の訪問は12月~2月と8月に集中しており、2024年冬も前年比20%以上の増加が見込まれる。
旅行代理店や観光施設にとってこの動きは大きなビジネスチャンスでもある。例年、韓国人の訪問は12月~2月と8月に集中しており、2024年冬も前年比20%以上の増加が見込まれる。
文化的共鳴と経済合理性が後押しに
ベトナムと韓国の距離は物理的にも文化的にも近い。その親近感とコストパフォーマンスの高さが相まって、ベトナムは韓国人にとって「気軽で満足度の高い海外旅行先」として定着しつつある。
ベトナムと韓国の距離は物理的にも文化的にも近い。その親近感とコストパフォーマンスの高さが相まって、ベトナムは韓国人にとって「気軽で満足度の高い海外旅行先」として定着しつつある。
[1] 出典:ベトナム国家観光局(VNAT)ニュース 2024年9月および最初の9ヶ月間の観光状況 」(2024年10月)
[2] 出典:ベトナム国家観光局(VNAT)データ、「 ベトナムへの外国人旅行者 > 市場セグメンテーション ” ( 4月 2025 )
[3] 出典:ベトナム共産党ニュース、 ベトナム航空はベトナムと韓国の関係促進において重要な橋渡し役を担っている 」(2024年7月)
[4] 出典:英国郵便局ニュース 2025年ホリデーマネーレポート 」(2025年3月)
[5] 出典:NAVER Corporation(韓国)データ ベトナム 」(2025年4月)
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B&Company株式会社
2008年に設立され、ベトナムにおける日系初の本格的な市場調査サービス企業として、業界レポート、業界インタビュー、消費者調査、ビジネスマッチングなど幅広いサービスを提供してきました。また最近では90万社を超える在ベトナム企業のデータベースを整備し、企業のパートナー探索や市場分析に活用しています。 お気軽にお問い合わせください info@b-company.jp + (84) 28 3910 3913 |